福利厚生制度は、従業員の満足度向上だけでなく、企業の税負担を軽減する手段としても注目されています。

福利厚生費は適切に運用すれば損金として計上でき、法人税の節税につながる仕組みです。

さらに、従業員側は給与と異なり所得税がかからないため、会社・従業員双方にメリットがあります。

本記事では、福利厚生費が節税につながる理由、経費として認められるための条件、そして実際に活用しやすい制度例をわかりやすく解説します。

1.福利厚生費が節税につながる理由

福利厚生費とは、企業が従業員やその家族のために提供する「給与以外のサービス」にかかる費用のことです。

大きく以下の2種類に分かれます。

  • 法定福利厚生費:社会保険料など法律で義務付けられたもの
  • 法定外福利厚生費:住宅補助、食事補助、レクリエーションなど企業が任意で提供するもの

このうち、節税効果が期待できるのは、企業が自由に設計できる法定外福利厚生です。

ここでは、節税につながる仕組みを「法人税」「所得税」「社会保険料」の3つの視点から整理します。

法人税:福利厚生費は損金算入できる

福利厚生費は法人税法上、会社の経費(損金)として扱われます。

適切に計上すれば、その分だけ課税所得が減り、法人税の負担が軽減されます。

たとえば、住宅補助を「現金手当」として支給する場合と、「社宅」として提供する場合を比較すると次の通りです。

項目住宅手当(現金支給)社宅(福利厚生として提供)
会社の損金算入○(給与として損金)○(福利厚生費として損金)
従業員の所得税課税される非課税
社会保険料算定対象に含まれる条件次第で対象外

どちらも会社の損金にはなりますが、従業員側の税・社会保険料の負担に大きな差が生じます。

同じ支出でも、福利厚生として提供するほうが税務上有利になるケースが多いのが特徴です。

所得税:従業員は非課税で受け取れる

福利厚生として提供されたサービスは、原則として従業員に給与課税されません。

そのため、同じ支出でも「現金で支給する場合」「福利厚生として提供する場合」では、従業員が受け取る実質的なメリットに大きな差が生まれます。

たとえば住宅補助の例にすると、次のような違いがあります。

  • 住宅手当として現金で支給 → 給与扱いとなり所得税・住民税がかかる
  • 社宅として提供 → 従業員が適正な自己負担をしていれば会社負担分は課税されない

このように、現金で支給すると課税対象となるものでも、福利厚生として提供すれば非課税で利益を受け取れるケースが多く、従業員の手取りが実質的に増える仕組みになっています。

社会保険料:負担軽減にもつながる場合もある

福利厚生費として扱われる支出の中には、給与と異なり社会保険料の算定対象に含まれないものがあります。

そのため、同じ金額を会社が負担する場合でも、給与として支給するより社会保険料の負担を抑えられるケースがあるのが大きな特徴です。

たとえば次のような福利厚生は、一定の要件を満たすことで標準報酬月額の計算に含まれない場合があります。

  • 食事補助(一定額以下の会社負担)
  • 社宅の提供(適正な自己負担がある場合)
  • 通勤手当の非課税範囲内の支給

給与として支給すると、所得税だけでなく社会保険料の算定基礎にも含まれるため、企業・従業員双方の負担が増えます。

一方、福利厚生として提供すれば、税負担だけでなく社会保険料の負担増も抑えられる可能性があり、総合的なコスト削減につながります。

さらに、福利厚生費は消費税の観点でも「課税仕入」として扱われ、仕入税額控除の対象となるケースが多い点も見逃せません。

このように、福利厚生は法人税・所得税だけでなく、社会保険料や消費税の面でも企業にとって有利に働く制度設計が可能です。

2.福利厚生費として認められるための5つの条件

節税効果を得るには、支出が税務上「福利厚生費」として認められる必要があります。

条件を満たさない場合は給与扱いとなり、追加の税負担が発生するリスクもあります。

ここでは、福利厚生費として計上するために押さえておくべき5つの条件を順番に解説します。

条件(1) 給与や賞与の代替ではないこと

福利厚生費として認められるためには、従業員への報酬や賞与の代替とみなされないことが重要です。

業績に応じて金銭や物品を支給する仕組みは、福利厚生ではなく給与・賞与として扱われる可能性があります。

福利厚生は「従業員全体の生活向上や健康増進を目的とした制度」であり、成果に応じた対価とは明確に区別されます。

そのため、税務署から「本来支給すべき賞与を福利厚生に置き換えた」と判断されれば、福利厚生費としての計上が否認されるリスクがあります。

条件(2) 現金や換金性の高いものでないこと

現金そのものや、商品券・ギフトカードなど換金性の高いものを支給した場合は、原則として給与扱いとなります。

たとえば「全従業員に3万円の商品券を配布する」といった施策は、福利厚生ではなく賞与として課税対象になります。

ただし、通勤手当のように目的が明確で非課税が認められるものや、慶弔見舞金のように習慣的に現金で支給されるものは例外として扱われます。

これらの取り扱いは項目ごとに判断が異なるため、個別の確認が必要です。

条件(3) 全従業員が平等に利用できる制度であること

福利厚生費として認められるためには、特定の従業員だけを対象とせず、全従業員に平等な利用機会がある制度であることが求められます。

「役員のみが利用できるサービス」や「特定部署だけを対象とした制度」は、税務上福利厚生費とは認められず、給与として課税される可能性があります。

制度を設計する際は、正社員だけでなくパート・アルバイトも含め、誰でも利用できる公平性を確保することが重要です。

条件(4) 社会通念上、妥当な金額であること

福利厚生費として計上する金額は、社会通念上妥当範囲に収める必要があります。

常識的な水準を大きく超える高額な支出は、福利厚生費ではなく給与や交際費として扱われる可能性があります。

たとえば社員旅行の場合、一人あたり数万円〜十数万円程度が一般的ですが、1人50万円の豪華海外旅行のような過度な支出は、福利厚生費として認められない可能性が高くなります。

具体的な金額基準については、後述の「節税効果が高い福利厚生の具体例」で解説します。

条件(5) 社内規定に明記し、実際に運用されていること

福利厚生として提供する制度の内容や利用条件は、就業規則や社内規定に明確に定めておく必要があります。

規定が整備されていない場合、税務調査で恣意的な支給と判断され、福利厚生費として認められないリスクがあります。

また、規定を作るだけでは不十分で、実際に制度が運用されていることも重要です。

形式的に規程だけ整備して運用が伴っていない場合、税務上は福利厚生費として扱われません。

制度導入後は継続的に運用と、従業員の利用を促す取り組みが求められます。

なお、福利厚生費の要件を満たさない支出は、給与課税へ切り替えられる可能性があり、法人税の追徴や源泉徴収漏れによる加算税などのペナルティが発生することもあります。

節税メリットを確実に得るためには、制度設計段階で専門家のチェックを受けることが望ましいです。

3.節税効果が高い福利厚生の具体例

ここからは、節税効果が高く、企業が導入しやすい代表的な福利厚生制度を紹介します。

社宅制度や通勤手当・出張手当といった日常的に活用できるものから、社員旅行やリゾート施設の利用など従業お員満足度の向上につながる施策まで、税務上のポイントとあわせて具体的に解説します。

社宅制度(住宅補助)

社宅制度は、節税効果が特に大きい福利厚生の代表例です。

会社が所有または賃貸契約した住宅を従業員に貸し付け、その会社負担分を福利厚生費として計上できます。

ただし、家賃を全額会社負担にすると給与扱いとなるため、従業員から毎月「賃貸料相当額の50%以上」を徴収する必要があります。

賃貸料相当額は国税庁が定める以下の計算式の合計額です。

  • (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2%
  • 12円 ×(建物の総床面積 ÷ 3.3㎡)
  • (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%

この賃貸料相当額は市場家賃より大幅に低くなることが多く、従業員は実際の家賃よりかなり低い負担で住むことができます。

また、自社で物件を所有していなくても、会社名義で賃貸契約した物件を従業員に転貸する「借り上げ社宅」の形式でも同様の節税効果が得られます。

中小企業でも導入しやすく、限られた給与原資で従業員の手取りを改善できる有効な制度です。

通勤手当・出張手当の非課税枠

通勤手当は、現金支給でも一定額まで所得税が非課税となる珍しい福利厚生です。

交通費という使途が明確なため、例外的に現金支給でも非課税が認められています。

  • 公共交通機関:最も経済的かつ合理的な経路で算出した運賃のうち、月額15万円まで非課税
  • マイカー・自転車通勤:通勤距離に応じて非課税限度額が段階的に設定

非課税限度額を超えた分は給与として課税されますが、適切な範囲内で支給すれば全額を経費化でき、従業員にも非課税で渡せるため、多くの企業で活用されています。

また、出張手当(出張日当)も非課税で支給できる制度です。

交通費や宿泊費とは別に、現地での食事代や雑費の名目で定額を支給するもので、適正な範囲であれば給与扱いにはなりません。

ただし、実費を大きく超える過大な日当は給与とみなされる可能性があるため、出張旅費規程を整備し、職位ごとの支給基準を明確にしておくことが重要です。

社員旅行・レクリエーション費

社員旅行やレクリエーション行事の費用は、一定の条件を満たすことで非課税の福利厚生費として認められます。

主な税務上のポイントは以下の通りです。

条件内容
全従業員に参加の機会があること特定の従業員だけを対象とした旅行は認められない
実際の参加率が過半数であること従業員の半数以上が参加することが条件
不参加者へ現金補填をしないこと旅行不参加者に代替の現金や商品券を支給するのはNG
社会通念上妥当な費用であること一人あたりの旅行費が常識の範囲内であること

これらの条件を満たす場合、旅行費用の全額を福利厚生費として損金算入でき、参加した従業員にも課税されません。

また、社員旅行に限らず、新年会・忘年会・社内スポーツ大会などの懇親イベントも、全従業員に参加機会があり費用が過大でなければ同様に福利厚生費として扱われます。

レクリエーション施策は、従業員のモチベーション向上やチームワーク強化に寄与するだけでなく、節税と従業員満足度向上の両面で効果的な取り組みです。

リゾート施設の福利厚生(保養所・会員制リゾート)

近年、リゾート施設を活用した福利厚生が注目を集めています。

かつては自社保養所を保有し、慰安旅行や家族での休暇に利用する企業が多くありました。

しかし、旅行スタイルの多様化やプライベート重視の価値観の広がりにより、画一的な保養所では従業員ニーズを満たしにくくなっています。

加えて、維持費や固定資産税の負担が重く、保養所を閉鎖・売却する企業も増えています。

こうした背景から広がっているのが、外部サービスを活用する「持たない保養所」という選択肢です。

会員制リゾートや契約保養所を活用することで、自社で施設を所有せずとも全国各地のリゾート施設を従業員に提供でき、利用料は福利厚生費として経費計上が可能です。

この方法には、次のようなメリットがあります。

  • 保養所の建設費・維持管理費・固定資産税などの固定費がかからない
  • 全国各地の施設から従業員が好みの行き先を選べるため利用率が上がりやすい
  • 中小企業でも比較的少額の年会費から導入できる
  • ワーケーション(リゾート地でのテレワーク)との組み合わせも可能

リゾート施設を活用した福利厚生は、従業員リフレッシュや休暇の充実を支援するだけでなく、満足度向上採用力強化にもつながります。

レジャー系の福利厚生は「従業員を大切にする会社」という印象を与える効果もあり、企業価値向上に寄与する施策として注目されています。

4.まとめ|福利厚生は「会社にも従業員にもメリットのある節税策」

福利厚生費は正しく運用すれば

  • 会社:損金算入で法人税を軽減
  • 従業員:非課税で受け取れる

という双方にメリットのある制度です。

節税効果を確実に得るためには、次の5つの条件を満たす必要があります。

  • 給与や賞与の代替ではない
  • 現金や換金性の高いものでない
  • 全従業員が平等に利用できる
  • 社会通念上妥当な金額である
  • 社内規定に明記し、実際に運用されている

特にリゾート施設を活用した福利厚生は、節税と従業員満足度の向上を同時に実現できる施策として注目されています。

リログループの株式会社リロバケーションズでは、ポイント制で全国のリゾート施設を柔軟に利用できる法人向けサービスを提供しています。

福利厚生の充実と節税対策を両立したい企業は、一度サービス内容を確認してみてはいかがでしょうか。

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