出張管理の情報収集を進める中で、「BTM」という言葉に触れた方も多いでしょう。
BTM(Business Travel Management)は、出張の申請・手配・承認・精算・分析といった一連のプロセスをシステム上で一元管理できる仕組みです。
属人的になりがちな出張業務を標準化し、業務効率化・コスト削減・ガバナンス強化を同時に実現できる点から、近年多くの企業で導入が進んでいます。
一方で、初期費用や運用定着のハードル、企業規模との相性など、導入前に押さえておくべきポイントも存在します。
自社に最適なBTMを選ぶためには、基本機能やメリット・デメリット、旅行会社系とITベンダー系の違いなどを正しく理解しておくことが欠かせません。
この記事では、BTMの仕組みから導入メリット・デメリット、選び方のポイント、よくある質問までを体系的に解説します。
出張管理の効率化を検討している総務・人事・経理担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
1.BTM(出張管理システム)とは?

出張管理は、申請・手配・承認・精算といった複数の工程が絡み合うため、どうしても属人的になりやすい領域です。
近年は出張単価の上昇や働き方の変化により、従来の紙やメールに依存した運用では限界が見え始めています。
こうした状況を受け、出張管理の効率化やコスト最適化を目的に、多くの企業がBTMの導入を検討するようになりました。
ここでは、まずBTMの基本的な仕組みと、導入が進む背景を整理します。
BTM(Business Travel Management)の定義と特徴
BTM(Business Travel Management)とは、出張に関わる一連のプロセスをシステム上で統合し、効率的かつ透明性の高い管理を実現する仕組みのことです。
日本では「出張管理システム」とほぼ同義で使われることが多く、総務・人事・経理部門を中心に導入が広がっています。
従来の出張管理では、申請は紙やメール、予約は出張者が個別で手配、精算は経理が個別対応といったように工程が分断され、手配品質のばらつきや承認漏れ、不正請求などのリスクが生じやすい状況でした。
BTMはこれらを一つのプラットフォームに集約し、
- 手配の標準化
- コストの最適化
- 内部統制の強化
- データに基づく意思決定
を可能にします。
BTMの提供形態は大きく「旅行会社系」と「ITベンダー系」に分かれ、それぞれ特徴が異なります。
BTMの主な提供形態と特徴
| 比較項目 | 旅行会社系 | ITベンダー系 |
| 強み | 海外出張・複雑な手配に強い | UI/UXの使いやすさ、システム連携 |
| サポート | 専任チーム・緊急対応デスク | オンラインサポート中心 |
| 費用感 | 初期費用が高め | 月額制・従量課金が多い |
| 適した企業 | 海外出張が多い大企業 | 国内出張中心の中小企業 |
旅行会社系は、長年の手配ノウハウや緊急時対応力が強みで、海外出張が多い企業に適しています。
一方、ITベンダー系は経費精算や勤怠管理システムとの連携がしやすく、国内出張中心の企業やコスト管理を重視する企業に向いています。
企業がBTM導入を進める背景
BTMの導入が加速している背景には、企業を取り巻く環境変化があります。特に以下の3点が大きな要因です。
(1)出張コストの上昇
日本旅行業協会の「保存版 旅行統計 2024」によると、国内宿泊旅行は回復基調にあるものの、旅行回数や宿泊数といった “量”は依然としてコロナ前の水準には戻っていません。
一方で、旅行単価は上昇しており、1回あたりの支出は増加しています。
- 1人あたりの宿泊数(2023年):4.77泊(前年より増加)
- 宿泊旅行回数(2023年):2.26回(前年より増加)
- 旅行単価(円/人回)
宿泊旅行:59,042円(2022年)→63,253円(2023年)
日帰り旅行:18,532円(2022年)→19,027円(2023年)
旅行の回数は増えつつあるものの、単価の上昇が顕著で、1回あたりの負担が大きくなっていることが分かります。
(2) 管理業務の複雑化と属人化
この傾向はビジネス出張にも当てはまります。
出張回数と旅費単価がともに上昇している状況では、出張頻度の高い企業ほど旅費管理の精度が経営に直結します。
個人手配のままでは、
- 旅費規程からの逸脱
- 割高な予約の発生
- 承認フローが曖昧な場合の不正請求リスク
といった問題が起きやすく、属人的な手配に依存するほど、コストの最適化やコンプライアンスの維持が難しくなります。
(3) リモートワーク普及による「出張の価値」の再評価
リモートワークが定着した今、移動を伴う出張には、以前よりも明確な目的や費用対効果の説明が求められるようになりました。
その意思決定を数字で支え、企業全体で出張管理を最適化する仕組みとして、BTMへのニーズが高まっています。
出張の可視化、コストの適正化、ガバナンス強化といった課題に対し、BTMは有効な解決策となり得ます。
2. BTMの主な機能と企業にもたらす効果
BTMには、出張の「申請・手配・承認・精算・分析」という一連の流れをシステム上で統合するための機能が搭載されています。
これらの機能が連動することで、出張管理の効率化だけでなく、コスト最適化やガバナンス強化にもつながります。
以下では、主要機能の特徴と導入効果をわかりやすく解説します。
出張予約の一元管理:手配業務の標準化とコスト最適化を実現
BTMの中心となるのが、航空券・新幹線・ホテルなどの出張手配を一つの画面で完結できる「予約一元管理機能」です。
複数の旅行サイトを比較する必要がなくなり、出張者は最適な選択肢を短時間で見つけられます。
さらに、法人契約に基づく割引運賃やコーポレートレート(企業専用の特別料金)が自動で表示されるため、担当者が個別に価格交渉をする必要もありません。
これにより、手配品質のばらつきが抑えられ、企業全体でのコスト最適化が進みます。
予約情報はリアルタイムで管理部門と共有されるため、複数名が同時期に同じ地域へ出張する際の調整もスムーズです。
出張者の行程を可視化できる点は、後述する安全管理の強化にもつながります。
承認ワークフローの自動化:承認漏れ・遅延を防ぐ仕組み
紙やメールでの申請管理は、承認漏れや処理遅延が起こりやすい運用です。
BTMでは、申請から上長承認までの流れをシステム上に集約し、承認ルートの自動設定や規程チェックを行います。
承認履歴はすべて記録されるため、監査対応の負担も軽減されます。
特に出張件数が多い企業では、承認プロセスの自動化による業務効率化の効果が大きく、導入メリットを実感しやすい領域です。
経費精算の効率化:立替負担の軽減と経理工数の削減
出張後の経費精算は、管理部門にとってもっとも負荷の大きい業務の一つです。
BTMでは予約データと精算処理が連動するため、出張者が領収書を個別に提出する手間が大幅に減ります。
法人一括払いに対応したサービスであれば、出張者の立替負担がゼロになり、経理部門も個別精算の処理が不要になります。
月末の精算業務が集中する企業にとって、工数削減の効果は非常に大きいといえるでしょう。
出張データの分析・可視化:データドリブンな出張管理を実現
BTMに蓄積される出張データは、企業の出張戦略を最適化するための重要な資産になります。
部署別・出張先別・目的別のコストを可視化できるため、無駄な出張の削減や予算配分の見直しに役立ちます。
グローバルTMCであるGBTA(Global Business Travel Association)の調査によると、
「出張データの可視化を行っている企業は、出張コストの最適化に成功する割合が約2倍に高まる」
と報告されています(GBTA Business Travel Index Report 2023 より)。
また、出張ポリシーの改定や経営層向けのレポート作成もシステム上で自動化できます。
感覚ではなくデータに基づいて意思決定できる点は、BTM導入の大きな価値の一つです。
3.BTM導入のメリット

BTMを導入することで、企業は出張管理の効果化だけでなく、コスト削減やガバナンス強化など多方面で大きなメリットを得られます。
ここでは、特に効果が大きい4つの領域について詳しく解説します。
利点1. 出張コストの削減につながる
BTM導入の代表的なメリットは、出張コストの削減です。
出張手配・承認・規程適用をシステム上で一元管理することで、割高な予約や規程逸脱が起こりにくくなり、結果として旅費全体の最適化が進みます。
海外TMCの Deprez Travel の調査では、
「BTM導入企業は出張コストを5〜24%削減できる可能性がある」
と報告されています。
例えば、年間出張費が5,000万円規模の企業で10%削減できれば、年間500万円のコスト圧縮に相当します。
出張頻度が高い企業ほど、削減効果はより大きくなります。
参考:Deprez Travel(TMC)「A Best Practices Guide to Corporate Travel Policy Compliance」
利点2. 総務・経理部門の業務負担を大幅に軽減できる
出張管理は、申請内容の確認・承認の催促・領収書の処理など、担当者の手作業が多く発生する領域です。
BTMを導入することで、申請から手配、精算までのプロセスが自動化され、担当者が個別対応に追われる状況が大幅に改善されます。
特に効果が大きいのは以下の点です。
- 申請内容のチェックが自動化される
- 承認フローが明確化され、催促業務が減る
- 領収書提出が減り、精算処理が効率化される
これにより、総務・経理部門は削減された工数をより付加価値の高い業務に振り向けられ、組織全体の生産性向上につながります。
利点3. 出張者の安全管理を強化できる
自然災害、感染症、政治情勢の変化など、渡航先のリスクは予測が難しいものです。
BTMには、出張者の位置情報や渡航先のリスク情報をリアルタイムで把握できる機能を備えたサービスもあり、緊急時の迅速な連絡・安否確認が可能になります。
国際ビジネストラベル協会(GBTA)は、
「出張者の位置情報を把握できる企業は、緊急時の対応スピードが平均で30%向上する」
と報告しています(GBTA Travel Risk Management Study 2023)。
企業に求められる「安全配慮義務」の観点からも、出張者の行動を可視化できる仕組みは重要性を増しています。
利点4. 内部統制とガバナンスが強化される
BTMでは、すべての申請・承認履歴がシステム上に記録されるため、監査対応が容易になります。
また、旅費規程を超える申請には自動でアラートが出るため、ルール逸脱を未然に防ぐことができます。
これにより、
- 不正請求の防止
- 承認漏れの防止
- 監査時のエビデンス確保
- 規程遵守率の向上
といった効果が期待でき、企業のガバナンス強化に直結します。
4.BTM導入のデメリットと注意点

BTMは多くのメリットをもたらす一方で、導入前に理解しておくべき注意点も存在します。
ここでは、企業がつまずきやすいポイントを整理し、導入を成功させるための視点を解説します。
初期導入コストが発生する
BTMはサービス形態が幅広く、初期費用が無料のライトプランから、ERP連携やワークフロー構築、全社研修まで含む大規模導入までさまざまです。
特に大企業向けのフルカスタマイズ型では、初期費用が数百万円規模になるケースもあります。
ただし、近年はクラウド型の普及により、
- 初期費用ゼロ
- 月額制
- 従量課金制
といった柔軟な料金体系が増えており、中小企業でも導入しやすい環境が整っています。
導入効果(コスト削減・工数削減)と投資額を比較し、費用対効果を見極めることが重要です。
従業員が新しいシステムに慣れるまで時間がかかる
BTM導入時にもっとも多い課題が「現場の抵抗感」です。
従来の手配方法に慣れた従業員にとって、新しい操作を覚える負担は小さくありません。
この課題を解消するには、以下のような取り組みが有効です。
- 導入前の研修やマニュアル整備
- 操作が直感的なUIを持つサービスを選ぶ
- 一部の部署での試験運用から段階的に展開する
特に段階的な導入は、現場の混乱を最小限に抑え、スムーズな定着につながります。
中小企業では機能が過剰になる場合がある
月間の出張件数が少ない企業では、BTMの高機能がオーバースペックになることがあります。
利用頻度が低い場合、投資対効果が見合わない可能性もあるため、導入前に以下を整理することが重要です。
- 月間・年間の出張件数
- 国内外の比率
- 出張者数
- 必要な機能レベル
必要最低限の機能に絞ったライトプランや、従量課金型のサービスを選ぶことで、無駄なコストを抑えながら導入できます。
自社の業務フローと合わない場合がある
BTMは標準化されたワークフローを前提としているため、企業独自の承認フローや例外運用が多い場合、システムと運用が噛み合わないことがあります。
このリスクを避けるには、
- 導入前に業務フローを棚卸しする
- 例外運用を減らし、標準化を進める
- デモ環境で実際の運用をシミュレーションする
といった準備が欠かせません。
5. 自社に最適なBTMシステムを選ぶためのポイント
BTMサービスは多様化しており、旅行会社系からITベンダー系まで幅広い選択肢があります。
自社に最適なサービスを選ぶためには、出張規模・既存システムとの連携・サポート体制といった複数の観点から比較検討することが欠かせません。
以下では、BTM選定時に特に重要となる3つの視点を整理します。
視点1. 出張規模と出張特性に合ったサービスを選ぶ
BTM選定の第一歩は、自社の出張規模や出張の特徴を整理することです。
月間の出張件数、国内外の比率、出張者数などを把握することで、必要な機能レベルが明確になります。
- 海外出張が多い企業
→多言語対応、現地サポート、緊急時対応に強い「旅行会社系BTM」が適している - 国内出張が中心の企業
→新幹線・国内航空券の予約に強く、UIが使いやすい「ITベンダー系BTM」が向いている
出張規模が大きい企業ほど、手配品質の標準化や緊急対応力が重要になるため、旅行会社系のメリットが大きくなります。
一方、国内中心でコスト管理を重視する企業は、システム連携に強いITベンダー系のほうが運用しやすい傾向があります。
視点2. 既存システムとの連携性を確認する
BTMは単体で完結するものではなく、経費精算システムや勤怠管理システム、会計ソフトなどと連携することで、初めて大きな業務改善効果を発揮します。
特に、データの二重入力が発生する環境では、BTMを導入しても業務効率化の効果は限定的になるため、以下の点を必ず確認しましょう。
- API連携の有無
- CSVエクスポートの可否
- 自社の会計・経費精算システムとの互換性
- デモ環境での動作確認
導入後に「連携できないことが判明した」というケースは少なくありません。
選定段階で実際の業務フローに沿ったシミュレーションを行うことが、失敗を防ぐ鍵になります。
視点3. サポート体制の充実度を見極める
BTMは導入して終わりではなく、運用定着が成功の分岐点となります。
そのため、サポート体制の充実度は選定時に必ず確認すべきポイントです。
特に重要なのは以下の点です。
- 24時間対応のヘルプデスクがあるか
- 専任の担当者が付くか
- 緊急時の連絡体制が整っているか
- 導入後の研修や運用サポートがあるか
出張は突発的なトラブルが発生しやすいため、サポート体制が弱いサービスでは現場の不安が大きくなります。
運用定着をスムーズに進めるためにも、サポートの質は必ず比較検討しましょう。
6. よくある質問(FAQ):BTM導入前に知っておきたい基礎知識
BTMの導入を検討する際、総務・人事・経理担当者から寄せられる質問には一定の傾向があります。
ここでは、特に問い合わせの多い内容を分かりやすく整理しました。
BTMとは出張管理システムのこと?
BTM(Business Travel Management)は、日本では「出張管理システム」とほぼ同義で使われています。
ただし、厳密にはシステムそのものだけでなく、出張ポリシーの策定・コスト分析・リスク管理などを含む“出張管理全体の最適化”を指す概念です。
海外では、トラベルマネジメント会社(TMC)が提供するコンサルティングサービスも含めてBTMと呼ばれることが多く、より広い意味を持っています。
日本企業が導入するBTMは、主に「出張管理システム」を中心とした運用が一般的です。
中小企業でもBTMを導入できる?
もちろん導入可能です。
近年はクラウド型の普及により、以下のような柔軟な料金体系が増えています。
- 初期費用ゼロ
- 月額制
- 従量課金制
- 小規模向けのライトプラン
そのため、出張件数が多くない企業でも導入しやすくなっています。
特に「申請・承認の見える化」や「精算の効率化」だけでも効果を実感できるケースが多く、中小企業の導入ハードルは以前より大幅に下がっているといえます。
BTMと経費精算システムの違いは?
BTMは、出張の申請・手配・承認・安全管理など、出張プロセス全体を管理する仕組みです。
一方、経費精算システムは、出張後の精算処理に特化したシステムで、領収書管理や会計処理を効率化します。
両者は役割が異なるため、併用することで出張管理の効率化が最大化します。
BTMで予約データを自動連携できれば、精算の手間が大幅に減り、管理部門の工数削減にもつながります。
BTM導入にはどれくらいの期間がかかる?
クラウド型のBTMであれば、導入準備から運用開始まで1〜2か月程度が一般的です。
一方、ERP連携や複雑な承認フローの構築を伴う場合は、3〜6か月ほどかかることがあります。
導入期間は、
- 自社の承認フローの複雑さ
- 既存システムとの連携有無
- 社内研修の必要性
によって変動します。
7. まとめ:出張管理の最適化は企業成長の基盤に
出張管理の効率化が必要だと感じながらも、日々の業務に追われ、なかなか改善に踏み出せない企業は少なくありません。
しかし、属人的な運用を続けている限り、コストの増加や業務負荷の偏り、ガバナンスの不安定さといった課題は解消されません。
BTMの導入は、こうした課題を根本から見直す大きな転機になります。
- 出張管理の標準化
- 承認フローの可視化
- 精算業務の効率化
- データに基づく意思決定
- 安全管理の強化
など、企業にとってのメリットは多岐にわたります。
特に出張件数が増えている企業や、管理部門の負荷が高まっている企業にとって、BTMは経営基盤を支える重要な仕組みとなるでしょう。
まずは、自社の出張管理にどのような課題があるのかを整理し、必要な機能や運用イメージを明確にするところから始めてみてください。
そのうえで、専門的な知見を持つ外部パートナーに相談することで、よりスムーズに導入検討を進められます。
リロケーション・インターナショナルは、東証プライム上場・リログループの一員として、長年にわたり多くの企業の海外赴任・出張支援を行ってきました。
豊富な実績と高い専門性を活かし、企業ごとの出張規模や運用体制に合わせた最適なビジネストラベルマネジメントをご提案しています。
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