日本企業における外国人労働者の受け入れは年々増加しています。

厚生労働省の調査によると、外国人労働者数は過去最多を更新し続けており、企業の人材戦略において欠かせない存在となっています。

一方で、制度理解の不足からコンプライアンス違反に発展するケースも少なくありません。

本記事では、外国人の就労ビザ(在留資格)の種類や取得手続き、雇用時の注意点、よくあるトラブルまでを体系的に整理し、採用担当者が実務で迷わないためのポイントをわかりやすく解説します。

1.外国人就労ビザと在留資格の違い

外国人雇用において意外と誤解されやすいのが、「ビザ(査証)」「在留資格」の違いです。

両者は似た言葉として扱われがちですが、制度上は役割が異なります。

ビザ(査証)とは

  • 日本に入国するための許可証
  • 海外の日本大使館・領事館が発行
  • 入国審査を受けるための“事前審査通過証”のようなもの
  • 日本入国後の活動内容を決めるものではない

在留資格とは

  • 日本国内でどんな活動(仕事・学業など)ができるかを定める資格
  • 入国後の活動内容を法的に規定する
  • 就労できるかどうかは、この在留資格で判断される

つまり、

ビザ=入国の許可

在留資格=日本でできる活動の許可

という関係です。

実務では「就労ビザ」という言い方が一般的に使われていますが、正確には「就労が認められる在留資格」を指します。

この違いを理解しておくことは、後述するコンプライアンス対応や業務範囲の判断において非常に重要です。

2.外国人就労ビザの種類

外国人を採用する際、まず理解すべきなのが「どの在留資格で、どの業務が可能なのか」という点です。

在留資格ごとに認められる活動内容は厳密に定められており、誤った理解のまま雇用すると企業側も罰則の対象となる可能性があります。

以下では、代表的な就労系在留資格をわかりやすく整理します。

(1) 特定技能

特定技能は、人手不足が深刻な分野において即戦力となる外国人材の就労を認める在留資格です。

対象となる業種は介護・外食・宿泊・建設・製造業など現在16分野に限定されており、分野ごとに従事できる業務内容も細かく規定されています。

そのため、企業側は「どの業務を任せられるのか」を事前に正しく理解しておくことが欠かせません。

また、特定技能1号では生活支援や日本語学習支援など、受け入れ企業または登録支援機関による支援体制の整備が義務付けられています。

受け入れ後のフォロー体制まで含めて検討することが重要です。

(2) 技術・人文知識・国際業務

技術・人文知識・国際業務は、専門的な知識やスキルを活かして働く外国人向けの在留資格です。

いわゆる「ホワイトカラー職種」向けで、エンジニア、企画、営業、通訳・翻訳、マーケティングなど幅広い業務が対象となります。

この在留資格の特徴は、学歴・実務経験と業務内容との関連性が必須であり、単純作業や現場労働のみを目的とした雇用は認められません。

例えば、大学で学んだ専門分野やこれまでの職務経験が、実際に担当する業務と合致している必要があります。

(3) 技能

技能は、日本では代替が難しい熟練した技術や、長年の実務経験を要する分野で働く外国人向けの在留資格です。

即戦力というよりも、「高度な職人技」や「専門性の高い技能」を持つ人材を受け入れるための資格といえます。

対象となる職種は、外国料理の調理師(中華料理・フランス料理など)、宝石・貴金属加工、家具製作、動物調教師、パイロット、スポーツ指導者などが該当します。

多くの場合、10年以上の実務経験が求められます。

学歴よりも実務経験や技能レベルが重視されることから、採用時には職歴証明書や実績資料など、技能を客観的に示す書類の提出が不可欠です。

(4) 企業内転勤

企業内転勤は、海外の本社・支社・関連会社に勤務している外国籍社員を、日本国内の事業所へ一定期間転勤させるための在留資格です。

グループ内での人材交流や、海外拠点との連携強化を目的とした人事配置に活用されるケースが多く見られます。

対象となるのは、技術・人文知識・国際業務に該当する業務内容であり、単純作業のみを行うことは認められていません。

また、原則として転勤前に1年以上海外拠点で勤務していることが要件となります。

この在留資格の特徴は、新たな採用ではなく「社内異動」として受け入れられるため、日本法人と海外法人との資本関係や指揮命令系統を明確に示す資料の提出が求められます。

(5) 経営・管理

経営・管理は、日本で会社を設立したり、既存企業の経営や管理業務に携わったりする外国人向けの在留資格です。

代表取締役、取締役、支店長、事業責任者など、経営判断や組織運営に関わる立場で活動する場合に該当します。

この在留資格では、学歴や職歴よりも「事業の実体」が重視されます。

具体的には、事業所の確保、資本金や投資額、雇用体制、事業計画の妥当性などが審査対象となり、形式的な会社設立だけでは許可されません。

(6) 教授

教授は、日本の大学や高等専門学校などの高等教育機関において、教育や研究活動を行う外国人向けの在留資格です。

大学教授・准教授・講師などとして、専門分野の教育や研究に従事する場合が該当します。

この在留資格の対象となるのは、大学、短期大学、高等専門学校などの公的・私的な教育機関であり、語学学校や一般的な民間研修機関は含まれません。

教育内容は、専門性を有する学術的分野であることが求められます。

また、雇用形態は常勤に限らず、非常勤や契約教員であっても対象となります。

(7) 芸術

芸術は、収入を伴う芸術活動を行う外国人向けの在留資格です。

画家、彫刻家、作曲家、作詞家、写真家、イラストレーターなど、芸術作品の創作そのものを主たる活動とする場合に該当します。

雇用契約による労働ではなく、芸術活動によって生計を立てていることが前提となる点に注意しましょう。

そのため、会社に雇用されてデザイン業務を行うケースなどは「技術・人文知識・国際業務」に該当し、「芸術」には当たりません。

(8) 宗教

宗教は、日本において宗教活動を行う外国人向けの在留資格です。

海外の宗教団体から派遣され、日本国内の宗教法人や関連施設で布教・儀式の執行・宗教教育などに従事する場合に該当します。

対象となる職種は、僧侶、司祭、牧師、宣教師などで、営利目的の活動や一般的な労働とは明確に区別されます。

報酬が支払われる場合でも、その内容が宗教活動の対価であることが必要です。

(9) 報道

報道は、海外の報道機関に所属する外国人が、日本国内で取材や報道活動を行うための在留資格です。

新聞社、通信社、放送局、ニュース配信会社などから派遣され、記者・編集者・カメラマン・報道ディレクターなどとして活動する場合に該当します。

この在留資格の前提となるのは、海外の報道機関との雇用関係が継続していることです。

フリーランスとして個人で取材活動を行う場合や、日本の企業に雇用されるケースは「報道」には当たりません。

(10) 法律・会計業務

法律・会計業務は、日本において弁護士や公認会計士など、法律または会計分野の専門業務に従事する外国人向けの在留資格です。

外国法事務弁護士や外国公認会計士など、一定の資格や登録を受けた専門家が対象となります。

この在留資格で従事できる業務は、日本の資格制度や業務独占規定と密接に関係しています。

例えば、日本法に基づく弁護士業務や公認会計士業務は、日本の資格を有しない限り行うことはできません。

そのため、実際の業務内容が許容範囲内かどうかの整理が非常に重要です。

(11) 医療

医療は、日本の医療機関において医師・歯科医師・看護師などの医療行為に従事する外国人向けの在留資格です。

病院や診療所などで、患者に対して直接医療行為を行う場合に該当します。

日本の医療関連資格を有していること、または取得見込みであることが原則となるので注意しましょう。

日本の国家試験に合格し、免許を取得していなければ医療行為を行うことはできません。

審査では、保有資格や免許の内容、所属する医療機関との雇用契約、担当業務の範囲が重視されます。

研修医や研究目的での活動の場合は、別の在留資格(教授・研究など)が適用されることもあります。

(12) 研究

研究は、日本の公的・民間の研究機関において、調査や研究活動を行う外国人向けの在留資格です。

大学の研究員や企業の研究所に所属し、特定のテーマについて研究業務に専念する場合に該当します。

この在留資格では、教育活動を主とする「教授」とは異なり、研究そのものが中心となります。

大学や研究機関との契約内容や、研究テーマ・期間が明確であることが求められます。

(13) 教育

教育は、日本の教育機関において、語学や専門分野の教育活動に従事する外国人向けの在留資格です。

主に、小学校・中学校・高等学校・専修学校・各種学校などで語学指導や専門教育を行う教師・講師が対象となります。

この在留資格は、大学で教鞭をとる「教授」とは異なり、初等・中等教育や専門学校レベルの教育機関での指導を想定しています。

ALT(外国語指導助手)や語学学校の講師などが代表的な例であり、英語教育の早期化とともに申請者も増えています。

(14) 介護

介護は、日本の介護施設や事業所において介護福祉士として専門的な介護業務に従事する外国人向けの在留資格です。

利用者の身体介助や生活支援など、直接的な介護サービスを担う場合に該当します。

日本の介護福祉士国家資格を取得していることが要件となるため、資格面の確認も必ず行いましょう。

技能実習や特定技能で介護分野に従事していた外国人が国家試験に合格した後、「介護」へ在留資格を変更するケースも多く見られます。

(15) 興行

興行は、日本で行われる公演やイベントなどの興行活動に出演・参加する外国人向けの在留資格です。

俳優、歌手、ダンサー、モデル、スポーツ選手、プロレスラーなど、観客を前提としたパフォーマンスを行う場合に該当します。

作品制作を主とする「芸術」と異なり、興行として報酬を得ることが前提となります。

テレビ出演、舞台公演、ライブイベント、撮影、試合への出場など、出演内容や期間が明確であることが求められます。

(16) 技能実習

技能実習は、日本で培われた技能・技術・知識を母国へ移転することを目的とした在留資格です。

人材確保を目的とする就労ビザとは性質が異なり、「実習」である点が制度上の大きな特徴となっています。

対象となる職種・作業は国が定めた分野に限られており、実習計画に基づいて段階的に技能を習得していきます。

技能実習では、業務内容、労働時間、賃金などについて厳格なルールが設けられており、単なる労働力として扱うことは認められていません。

不適切な運用は、受け入れ停止や行政指導につながるリスクがあるので注意しましょう。

3.就労ビザ取得の流れ

就労ビザの取得では、在留資格の選定から入管への申請まで複数のステップを踏む必要があります。

この章では、外国人を雇用する際に押さえておきたい就労ビザ取得の基本的な流れと、企業が注意すべきポイントを分かりやすく解説します。

初めて外国人採用に取り組む企業の方もご参考ください。

新規の申請(海外から招へいする場合)

新規の申請は、海外にいる外国人を日本に招へいし、就労してもらう場合に行う手続きです。

  1. 該当する在留資格を選定する
  2. 雇用契約書・労働条件通知書を作成する
  3. 出入国在留管理局へ在留資格認定証明書(COE)交付申請を行う
  4. 在留資格認定証明書(COE)の交付を受ける
  5. 外国人本人が海外の日本大使館・領事館でビザ申請を行い、日本へ入国する

審査では、業務内容と在留資格との適合性や、報酬・勤務条件の妥当性、企業の経営状況などが総合的に判断されます。

特に、業務内容の説明が抽象的な場合や、日本人と比較して不合理な待遇となっている場合は、不許可となる可能性が高まります。

在留資格は同じままで勤務先を変更する場合

在留資格の種類を変えずに勤務先を変更する場合でも、就労内容が現在の在留資格の範囲内に収まっているかを確認し、適切な届出や手続きを行う必要があります。

  1. 新しい勤務先での業務内容が、現在の在留資格の活動範囲に合致しているかを確認する
  2. 雇用契約書・労働条件通知書を作成する
  3. 出入国在留管理局へ「所属機関に関する届出」を行う(14日以内)
  4. 必要に応じて「就労資格証明書」の交付申請を行う
  5. 新しい勤務先で就労を開始する

特に注意すべき点は、勤務先が変わることで業務内容が実質的に変化していないかという点です。

また、就労資格証明書は任意ですが、転職後の更新手続きがスムーズになるため取得が推奨されます。

在留資格を変更する場合

業務内容が変わり、現在の在留資格では就労できなくなる場合には、在留資格の変更申請が必要です。

無断で業務内容を変更すると在留資格違反となるおそれがあり、また審査結果が出るまで新業務に従事できないため、早めの申請が重要です。

  1. 新たに従事する業務内容を整理し、該当する在留資格を選定する
  2. 雇用契約書・労働条件通知書を作成する
  3. 出入国在留管理局へ「在留資格変更許可申請」を行う
  4. 申請内容について入管の審査を受ける
  5. 許可後、新しい在留資格の範囲で就労を開始する

審査では、業務内容と在留資格の適合性に加え、これまでの在留状況、就労実績、報酬条件なども総合的に判断されます。

4.就労ビザを持つ外国人を雇用する際の注意点

就労ビザを持っているからといって、全ての業務が可能なわけではありません。

制度理解が不足したまま「ビザがあるから問題ない」と判断してしまうと、知らないうちに在留資格違反や法令違反に該当してしまうケースもあります。

この章では、就労ビザを持つ外国人を雇用する際に企業が押さえておくべき基本的な注意点と、実務で見落としやすいポイントを解説します。

労働条件を理解しているか確認する

働く本人が契約内容を十分に理解しないまま就労してしまうと、後から「聞いていた話と違う」といった認識のズレが生じます。

賃金、支払い方法、労働時間、残業、休日・休暇など、日本人には当たり前の制度でも、外国人には分かりにくい場合があります。

可能であれば、雇用契約書や労働条件通知書を母国語または分かりやすい日本語で説明し、口頭でも内容を確認することをおすすめします。

採用・離職時の届出

外国人を新たに採用した場合や、雇用契約の内容に変更があった場合には、「所属機関に関する届出」を入管へ提出する必要があります。

また、退職時や契約終了時にも同様に、定められた期限内(原則14日以内)に届け出を行わなければなりません。

これらの届け出は、本人が行うものではありますが、企業側が制度を理解していないと未提出や遅延が起こりがちです。

その場合、本人だけでなく企業側の管理責任も問われますので注意しましょう。

労働契約書の明確化

労働契約書には、業務内容、労働時間、休日、賃金、契約期間など、労働条件を具体的かつ分かりやすく記載しましょう。

特に、実際の業務内容在留資格の整合性を明確にし、誤解が生じないよう契約内容を丁寧に説明しましょう。

言語や制度への理解に差があるからこそ、「言った・言わない」の行き違いを防ぐ工夫が必要になります。

日本人社員と同様の雇用形態であっても、契約更新の有無や条件、試用期間の扱いなどは、曖昧にせず明示しておくことでトラブル防止につながります。

ビザ更新・変更手続きのサポート

外国籍社員が日本で働き続けるためには、在留資格(就労ビザ)の更新・変更手続きを適切に行うことが不可欠です。

しかし、手続きの流れや必要書類は複雑で、個人だけで対応するとミスや漏れも生じます。

在留期限の管理は企業側の重要な役割です。在留期限を把握して「更新時期が近い」と早めに声をかけるなど、基本的なサポート体制を整えておきましょう。

期限切れは不法就労につながり、企業も罰則対象となります。

5.就労ビザに関するよくあるトラブル

就労ビザに関するトラブルは、「悪意があったから」ではなく、制度を正しく理解できていなかったことや、確認不足から起こるケースがほとんどです。

あらかじめよくあるトラブルのパターンを知っておくことは、リスク回避の第一歩となるでしょう。

この章では、実務の現場で起こりがちな就労ビザ関連のトラブルを整理し、企業として押さえておくべきポイントを解説します。

資格外活動による逮捕・罰則

就労ビザを持っているからといって、すべての仕事が自由にできるわけではありません。

在留資格ごとに「従事できる活動内容」は厳密に定められており、その範囲を超えて働くことを「資格外活動」といいます。

本人に悪気がなくても、業務内容が在留資格と一致していなければ違法と判断されるので双方よく認識しておきましょう。

更新忘れ・期限切れによる在留資格失効

在留資格には必ず有効期限があり、期限内に更新手続きを行わなければ、自動的に失効します。

しかし、実務の現場では「本人任せにしていた」「忙しくて後回しになった」といった理由で、更新忘れが起こるケースが少なくありません。

在留期限を1日でも過ぎてしまうと、その時点で不法滞在となり、就労を継続することはできません。

たとえ更新申請の意思があったとしても、期限切れ後の勤務は原則として違法扱いとなる点に注意が必要です。

社会保険・税務の不備

外国人を雇用する場合であっても、社会保険や税務の取り扱いは原則として日本人と同じです。

しかし、「外国人だから大丈夫」「短期間の雇用だから手続き不要」という誤解から、いつの間にか法令違反になっているケースが少なくありません。

雇用形態や労働条件を正しく整理したうえで、社会保険・税務手続きを漏れなく行うことが重要です。

国籍に関わらず「同じルールで管理する」意識を持ち、必要に応じて専門家の確認を受けましょう。

6.まとめ|外国籍社員の受け入れは専門サポートの活用でリスクを最小化

外国籍社員の受け入れは、人材確保や組織の活性化につながる一方で、就労ビザ・在留資格・労務・生活支援など、対応すべき領域は多岐にわたります。

制度理解の不足や確認漏れがあると、思わぬトラブルに発展することもあります。

こうしたリスクを避けるためには、外国籍社員の受け入れに精通した専門機関のサポートを活用することが効果的です。

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