近年、ビジネスシーンで頻繁に耳にするようになったウェルビーイング(Well-being)

働き方改革や人的資本経営が叫ばれる今、ウェルビーイングの実現は、企業の生産性向上や優秀な人材の確保に直結する重要課題となっています。しかし、いざ自社で取り組もうとしても、具体的に何をすればいいのか分からない、コストやリソースが足りないと悩む担当者様も多いのではないでしょうか。

この記事では、ウェルビーイングの基礎知識から、注目される社会的背景、そして企業におけるウェルビーイング実現の具体的施策までを網羅的に解説します。

目次

1. ウェルビーイングの定義と構成要素

ウェルビーイングとは

ウェルビーイングという言葉が初めて使われたのは、1946年に作成され、1948年に発効された世界保健機関(WHO)の憲章です。

その憲章における「健康」の定義で使われた単語であり、その定義は「健康とは、単に疾病や病弱がない状態ではなく、肉体的・精神的・社会的に完全に良好な状態」とされています。

その中の「良好な(well)」「状態(being)」が合わさった言葉がウェルビーイング(Well-being)です。「状態(being)」とあることからもわかるように、Well-beingは一時的なものではなく、良好な様子を長期的に持続させることを目指す考え方です。

ウェルビーイングを理解するための代表的な指標     

ウェルビーイングが注目されるようになった現在、世界中でこの分野における研究が多数行われています。ここではウェルビーイングを理解するための代表的な2つの指標をご紹介します。

  1. PERMA(パーマ)理論:
    ポジティブ心理学の創始者である米・ペンシルベニア大学心理学部教授のマーティン・セリグマン博士が考案した理論。
    PERMAの5つの要素を満たしている人こそが良好な状態(Well-being)とした。  
  2. ギャラップ社の5要素:
    米国で世論調査などを手掛けるギャラップ社が定義した5要素。ビジネス観点でウェルビーイングを考える時に役立つ指標。  
指標体系構成要素
PERMA(パーマ)理論Positive Emotion(ポジティブ感情)
Engagement(物事への没頭)
Relationship(人間関係)
Meaning and Purpose(人生の意義・目的)
Achievement/ Accomplish(達成感)
ギャラップ社の5要素Career Well-being(キャリアの健全性)
Social Well-being(人間関係の質)
Financial Well-being(経済的な充足感)
Physical well-being(心身の健康)
Community well-being(地域社会との繋がり)

PERMA理論には、近年「V(Vitality:活力)」を加えたPERMA-Vという拡張版も提唱されています。
これは、睡眠、運動、栄養といった身体的な土台が、精神的なウェルビーイングを支えるエネルギー源になるという考え方です。

2. なぜ今、ウェルビーイング経営が求められるのか?

企業にとって「ウェルビーイング経営」は、単に従業員の健康を管理する取り組みではありません。従業員が肉体的、精神的、そして社会的に良好な状態(Well-being)で働ける環境を整え、企業の持続的成長につなげる経営手法です。

では、なぜ今これほどまでにウェルビーイング経営が注目されているのでしょうか。その背景には、企業を取り巻く環境の大きな変化があります。

深刻化する労働力不足と人材定着(リテンション)の重要性

少子高齢化が進む日本では、労働力不足が構造的な課題となっています。

採用難が続く中、「今いる人材をいかに定着させるか」が経営の最優先テーマになりました。

さらに、2025年5月の労働安全衛生法改正により、これまで努力義務であった労働者数50人未満の事業場についても、ストレスチェックが義務化されました。企業には、従業員のメンタルヘルスを含む健康管理をより積極的に行うことが求められています。

また、離職には至らなくとも意欲を失う「静かな退職(Quiet Quitting)」も増加しています。ウェルビーイングが低下した状態で放置すると、生産性の低下や組織の停滞を招くため、早期の対策が不可欠です。

価値観の多様化:「選ばれる企業」への転換

若手を中心に、働く目的は「収入」だけではなくなりました。

  • 仕事だけでなく日々の活動全般を楽しめているか
  • 自分らしく働けるか
  • 仕事とプライベートの調和がとれているか

こうした価値観が重視され、企業にも生活の質(Quality of Life)を尊重する姿勢を求められています。

SNSや口コミサイトの普及により、企業の内部環境は可視化され、「従業員を大切にしている企業かどうか」が採用市場での競争力を左右する時代になりました。

SDGs・ESG投資・人的資本経営の世界的な潮流

世界的にSDGsやESG投資が広がる中、企業は「従業員を資本として捉える」人的資本経営への転換を迫られています。ウェルビーイングは、企業の持続可能性を評価する重要な客観的指標となっています。

投資家は、従業員の健康・働きがい・エンゲージメントといった指標を、将来の収益性を予測する重要な材料として評価しています。

ウェルビーイングへの取り組みは、企業の社会的責任(CSR)であると同時に、資本市場における信頼を獲得するための戦略的な開示事項となっているのです。

3. ウェルビーイング経営がもたらす4つの導入メリット

ウェルビーイング経営がもたらす投資対効果について、以下の項目が挙げられます。

メリット項目具体的な効果数値的根拠の補足
生産性の最大化創造性や作業効率の向上ポジティブな精神状態により、生産性が平均31%向上
離職率の低下帰属意識の向上による定着幸福が成功の先行要因となる因果関係が学術的に立証されている
採用力・ブランド強化企業の魅力向上従業員の幸福を大切にする姿勢が、求職者に対する客観的なアピールポイントとなる
組織内の活性化コミュニケーションの円滑化社会的な関係性が満たされることで、情報の共有スピードと精度が向上する

それぞれ実証データに基づき解説していきます。

(1) 従業員のパフォーマンス・生産性の最大化

ポジティブ心理学の第一人者のひとりであるショーン・エイカー氏は、著書『幸福優位7つの法則』で、幸福が成功の結果ではなく「先行要因」であるとする「幸福優位性(ハピネス・アドバンテージ)」を提唱しました。

彼が紹介する研究データによれば、「幸福感の高い社員はそうでない社員に比べて、創造性は3倍、生産性は31%、売上は37%高い」という傾向が示されています。これは、脳がポジティブな状態にあるとドーパミンが放出され、情報の整理や分析をつかさどる学習中枢が活性化するためです。

また「幸福感の高い社員は、欠勤率が41%低く、離職率が59%低く、業務上の事故が70%少ない」ともされており、ストレスが過度な状態では、脳のパフォーマンスが低下し、ミスや判断の遅れを招くことがわかります。

従業員のウェルビーイングを整えることは、組織全体の知性を最大化させるプロセスと言えます。

(2) エンゲージメント向上による離職率の低下

従業員が「会社から大切にされている」「自分の生活や健康をサポートしてくれている」と実感できる環境は、組織への信頼を高め、働く意欲を引き出します。こうしたポジティブな感情はエンゲージメントの向上につながり、結果として離職率の低下をもたらします。

実際に、国内外の調査でもエンゲージメントの高さと離職率の低さには明確な関連があることが示されています。

エンゲージメントと離職率の関係を示す主な研究・データ

■ リンクアンドモチベーション「エンゲージメントと退職率の関係」調査

2010〜2018年のエンゲージメントスコア(ES)と退職率の関係を分析した結果、「エンゲージメントが高いほど退職率が低い」という傾向が確認されています。

(引用元:https://www.lmi.ne.jp/research/finding/detail.php?id=10

■ 大企業従業員1,840名を対象とした日本総研の調査

従業員エンゲージメントと離職意向の関係を調査した結果、エンゲージメントを高めることで離職意向を低下させる可能性が示唆されています。特に「気軽に相談できる同僚がいる」など、職場内の関係性が離職意向の抑制に寄与する点が強調されています。

(引用元:https://www.jri.co.jp/column/opinion/detail/16213/

■ 厚生労働省「若年者雇用実態調査」

職場への満足度が高い層ほど離職意向が低い傾向が明確に表れています。

特に「人間関係」「健康・生活面の支援」への満足度が高いほど、離職意向が有意に低いことが報告されています。

(引用元:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/4-21c-jyakunenkoyou-r05.html

(3) 優秀な人材の採用・企業ブランディングの強化

ウェルビーイングの観点から福利厚生や働く環境を整備することは、採用市場における強力な差別化要因となります。

SNSや口コミサイトの普及により、企業の内部実態はこれまで以上に透明化されました。従業員が実際に「大切にされている」と実感できる仕組みを持つ企業は、その誠実さが外部にも伝わり、結果として採用力や企業ブランドの向上につながります。

実際に、エンゲージメントの高い組織ほど採用市場で優位に立つことを示す研究は数多く存在します。

採用力・企業ブランドとエンゲージメントの関係を示す主な研究・データ

■ Gallup社「State of the Global Workplace」

Gallupの国際調査では、エンゲージメントの高い企業は、優秀な人材から“働きたい企業”として選ばれやすいことが報告されています。エンゲージメントが高い組織は、従業員の推奨度(eNPS)が高く、口コミによる採用効果が強い点が特徴です。

(引用元:https://www.gallup.com/workplace/349484/state-of-the-global-workplace.aspx

■ LinkedIn「Global Talent Trends」

LinkedInの調査では、求職者の約70%が「企業文化」や「働きがい」を重視して企業を選ぶと回答。特に、従業員のウェルビーイングに投資している企業は、採用候補者からの応募率が高いことが示されています。

(引用元:https://www.linkedin.com/business/talent/blog/talent-strategy/global-talent-trends-report

■ Great Place to Work®(GPTW)

GPTWの分析によると、従業員が「働きがい」を感じている企業は、

  • 応募者数が平均2倍以上
  • 採用コストが大幅に削減

される傾向が確認されています。働きがいの源泉として、ウェルビーイング施策や心理的安全性の高さが大きく寄与しています。

(引用元:https://www.greatplacetowork.com/resources/reports

(4) 組織内のコミュニケーション活性化

従業員同士の関係性(Relationships)を高める施策は、心理的安全性を醸成し、チームの連携を強化します。

エンゲージメントが高い組織では、自然とコミュニケーションが活性化し、情報共有のスピードや質が向上することが多くの研究で示されています。

特に、ウェルビーイング施策によって「安心して意見を言える」「互いに支え合える」といった環境が整うと、チーム内の協働が促進され、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

エンゲージメントとコミュニケーション活性化の関係を示す主な研究・データ

■ Google「プロジェクト・アリストテレス」

Googleが行った大規模調査では、成果を上げるチームの最重要要素は「心理的安全性」であると結論づけています。心理的安全性が高いチームでは、メンバー同士のコミュニケーションが活発になり、建設的な意見交換が促進されることが示されました。

(引用元:https://rework.withgoogle.com/print/guides/5721312655835136/

■ Gallup「State of the Global Workplace」

Gallupの調査では、エンゲージメントが高い従業員は、同僚との協力行動が21%増加することが報告されています。エンゲージメントが高まるほど、チーム内での助け合いや情報共有が活発になり、組織のコミュニケーションが円滑になる傾向が明確です。

(引用元:https://www.gallup.com/workplace/349484/state-of-the-global-workplace.aspx

■ ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)

HBRの研究では、心理的安全性の高いチームは、アイデア提案や問題共有が活発で、学習行動が高いことが示されています。これは、ウェルビーイング施策によって心理的安全性が高まると、コミュニケーションの質が向上することを裏付けています。

(引用元:https://hbr.org/2017/08/high-performing-teams-need-psychological-safety-heres-how-to-create-it

4. ウェルビーイング経営実現の具体的施策

ウェルビーイング経営実現のために、具体的にどのようなアクションが必要かをカテゴリ別にご説明します。

キャリアの充実を支える

キャリア・ウェルビーイングは、仕事への納得感や自己成長の実感を生む最重要要素です。

主な施策

  • 1on1ミーティングの質向上(強み・キャリアに焦点)
  • リスキリング支援(資格取得支援、外部研修への費用補助、eラーニング)
  • 社内公募制度・ジョブローテーション
  • テレワーク・フレックスタイム制などの柔軟な働き方
  • キャリア面談の定期実施

期待される効果

  • 仕事への納得感・目的意識の向上
  • 自己効力感の向上
  • 中長期的な定着率の改善

人間関係の質を高める:心理的安全性とコミュニケーション文化

良好な人間関係は、エンゲージメントの中心的要素です。職場内の心理的安全性を高め、孤立を防ぐ取り組みは、組織の生産性にも大きく寄与します。

主な施策

  • サンクスカード・ピアボーナス
  • 社内コミュニティ・部活動支援
  • オンボーディング強化(新入社員の孤立防止)
  • 心理的安全性を高める管理職研修
  • 部署横断の交流イベント

期待される効果

  • 孤立の防止
  • 協働の促進
  • 組織文化の一体感向上

経済的な安心を提供する:ライフプラン・家族支援

経済的な不安は、仕事のパフォーマンスやメンタルヘルスに直結します。現在の給与水準だけでなく、将来への見通しや資産形成に対する安心感を提供することが重要です。

主な施策

  • 資産形成セミナー(NISA・iDeCo・ライフプラン)
  • 住宅手当・教育手当などの生活支援
  • 育児・介護支援制度(時短勤務、相談窓口、補助金)
  • 不妊治療・医療費補助
  • 介護離職防止のための外部サービス連携

期待される効果

  • 経済的不安の軽減
  • ライフイベントによる離職リスクの低減
  • 長期的なキャリア継続の支援

心身の健康を守る:フィジカル&メンタルヘルス支援

健康はすべてのウェルビーイングの土台です。身体的・精神的な活力を支える支援です。

主な施策

  • 定期健診の充実化、産業医面談
  • メンタルヘルス相談窓口の設置
  • レジリエンス(逆境力)研修、マインドフルネス研修
  • 運動促進施策(歩数イベント、オフィスヨガ、ジム補助)
  • 睡眠改善セミナー、パワーナップ(積極的仮眠)制度

期待される効果

  • ストレス耐性の向上
  • 欠勤率の低下
  • パフォーマンスの最大化

社会とのつながりを育む:パーパス浸透とコミュニティ支援

自分の仕事が社会に貢献していると実感できると、エンゲージメントは大きく高まります。

主な施策

  • ボランティア休暇
  • プロボノ活動の支援
  • パーパス浸透施策(社内共有会、ストーリーテリング)
  • 地域イベントへの参加支援

期待される効果

  • 社会貢献実感の向上
  • 自己有用感の向上
  • 組織への誇りの醸成

5. 企業が直面する「実行の壁」

ウェルビーイング経営実現に向けた施策で、企業が陥りがちな課題をご紹介します。

「制度はあっても使われない」形骸化の課題

自前で制度をつくっても、利用手続きが複雑だったりメニューに魅力がなかったりすると形骸化します。従業員のニーズに合致しないサービスは利用率が極めて低くなる実態もあり、利便性と多様な選択肢の確保が必要です。

「制度の満足度」は、その制度が「自分事」として捉えられているかに比例します。個々のライフスタイルに合わせた選択肢の多さが、結果としてウェルビーイングの向上実感につながります。

担当者のリソース不足とコストの限界

小規模な企業では、福利厚生の企画や運営に専任のリソースを割くことが難しく、コスト面でもバイイングパワーを持てないという限界があります。

福利厚生の提携先を一件ずつ開拓し、契約を維持する手間やコストは、目に見えない人件費として経営を圧迫します。さらに、利用実績の集計や支払業務といった煩雑な事務作業が、本来の人事戦略に充てるべき時間を奪ってしまうことも少なくありません。

まとめ

本記事では、ウェルビーイングの定義から経営におけるメリット、実践のポイントまでを解説しました。

従業員が心身ともに健康で、社会的に満たされた状態で働ける環境をつくることは、企業の持続的な成長に不可欠です。

しかし、理想的な環境をすべて自前で整備するには、膨大なコストと労力がかかります。

自社のリソース・予算と照らし合わせ、必要に応じてアウトソーシングサービスも視野に入れつつ、ぜひ自社に合ったウェルビーイング経営を進めてください。

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導入企業様からは、

「採用活動において、他社より福利厚生が充実した自社に入社を決めていただいた」
「家族からも『良い会社に入ったね』と言われるようになった」

といった声が寄せられており、従業員の周囲(家族や地域)のウェルビーイングにも貢献しています。

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