海外出張における「日当」は、社員が現地で業務に集中できるよう、食費や雑費などの生活関連費を補助する目的で支給される手当です。
しかし、企業ごとに支給基準や計算方法が異なるため、
「どの程度の金額が妥当なのか」
「どのように規程を作ればよいのか」
と悩む担当者は少なくありません。
本記事では、海外出張の日当の相場から計算方法、制度設計のポイント、注意点までを体系的に解説します。
これから規程を整備したい企業や、既存制度を見直したい担当者の方は参考にしてください。
1.出張手当(日当)の相場はどれぐらい?
日当は、社員が安心して出張できるように支給される手当ですが、企業規模や業界によって支給額に幅があります。
ここでは、国内・海外出張それぞれの一般的な日当相場の目安や設定のポイントを整理し、自社規定作りに活かせる情報を解説します。
(※参考:財務省「民間企業における出張旅費規程等に関するアンケート 報告書」)
国内出張の日当相場
国内出張の日当は、1日あたり2,000円~5,000円程度が一般的です。
都市部への出張や拘束時間が長い場合は高めに設定される傾向があります。
- 主要都市での1泊出張:3,000円前後が目安
- 地方都市:やや低めに設定されるケースが多い
また、日当の中に交通費や宿泊費を含めるかどうかは企業によって異なるため、あらかじめ規程で明確にしておくことが重要です。
社員のモチベーションや働きやすさにも直結する制度であるため、適切な水準で設定することが求められます。
海外出張の日当相場
海外出張の日当は、1日あたり5,000円~15,000円程度が一般的です。
国内出張以上に、出張先の国・都市の物価水準によって大きく変動します。
- 物価が高い都市:高めに設定
- 物価の低い地域:控えめに設定
- 長期出張:追加補助を設ける企業もある
為替変動の影響も受けるため、定期的な見直しが必要となります。
2.海外出張の日当は何をカバーする?基本構成を解説

海外出張の際に支給される日当は、単なる生活費補助ではなく、社員が安心して業務に集中できるよう設計された制度です。
設定金額に迷う場合は、食費、雑費、交通費(現地での移動にかかる費用)など、出張先で発生する支出を項目ごとに整理してみると分かりやすいでしょう。
ここでは、海外出張の日当の基本構成を解説しつつ、設定のポイントを整理しながらお伝えします。
食事代
海外出張の日当の主要構成要素の一つが、食事代です。
日当には朝・昼・夕の3食分の費用を想定して設定されることが多く、都市ごとの物価差を反映させるのが一般的です
- 物価の高い都市では1日あたりの食費を高めに設定
- 物価の低い都市では控えめに設定
- 宿泊プランに朝食が含まれる場合は日当から控除
- 現地で会食がある場合は別途ルール化しておくとトラブル防止に有効
国・地域別の食費目安に整理し、社内規程に落とし込むと運用がスムーズです。
なお、宿泊費は日当とは別に、上限を設けた上で実費精算する企業が多いです。
雑費・現地交通費
海外出張日当には、食事代以外に現地での雑費や交通費を含めて設定することが一般的です。
雑費とは、電話代、文具費、コーヒー代など、出張中の細かな支出をカバーするための費用を指します。
一方、現地交通費は、空港~ホテル間の移動や営業先訪問など、業務上必要な移動にかかる費用です。
日当でこれらをカバーする場合、現地の物価や交通事情を考慮して金額を設定することが重要です。
例えば、公共交通が発達している都市と移動手段が限られる都市では必要額が異なるため、都市別に目安を設定しておくと運用がスムーズです。
また、タクシー利用の頻度や出張者の役職・業務内容によって調整したり、交通費だけ宿泊費と同じく実費精算したりする方法もあります。
拘束時間に対する報酬
海外出張では、長時間移動や時差の影響による長時間勤務など、負担が大きくなりがちです。
そのため、拘束時間に対する補填として日当を調整する企業もあります。
例:
- 出張初日や帰国日はフル日当の50%~75%を支給
- 役職別や出張内容別に日当を調整
出張日数の算定方法や移動日の扱いを明確に規程化しておくと、公平かつ透明な支給が可能になります。
3.海外出張で日当を支給するメリット
海外出張の日当制度は、単なる「手当の支給」にとどまらず、企業の経費管理、社員の働きやすさ、組織の競争力向上にまで影響する重要な制度です。
ここでは、制度導入によって得られるメリットをより深く解説します。
損金として計上できる
海外出張の日当は、業務遂行に必要な費用として扱われるため、適切に支給すれば損金算入が可能です。
損金算入できるということは、法人税の課税所得を圧縮できるため、企業にとって財務面でのメリットが大きい制度といえます。
また、財務省の調査によると、出張旅費規程を整備している企業ほど、税務リスクが低く、経費管理の透明性が高い傾向があるとされています(財務省「民間企業における出張旅費規程等に関するアンケート」より)。
ただし、税務上の扱いには注意が必要です。
- 過剰な日当は給与扱いとなり損金算入できない
- 規程が曖昧だと税務調査で指摘される可能性がある
- 支給基準が属人的だと「実費弁償」と認められないことがある
そのため、税務署が確認した際にも説明できるよう、「出張旅費規程に基づく一律支給」であることを明確にしておくことが重要です。
経費精算の効率化が進む
日当制度の導入は、経費精算業務の効率化に大きく寄与します。
通常、海外出張では、食事・雑費・現地交通費など細かな支出が多く、領収書の収集・管理は出張者にとって大きな負担となります。
しかし、日当制度を導入すると以下のようなメリットが生まれます。
- 領収書の収集が不要になり、出張者の負担が軽減される
- 経理担当者のチェック作業が大幅に削減される
- 精算処理のスピードが向上し、締め作業がスムーズになる
- 不明瞭な支出や不正精算のリスクが減る
さらに、クラウド経費精算システムと組み合わせれば、日当の自動計算・自動支給・履歴管理まで一元化でき、経理部門の業務効率は飛躍的に向上します。
優秀な人材の確保・定着につながる
海外出張は、企業にとって重要な業務である一方、社員にとっては負担も大きい業務です。
そのため、日当制度が整備されているかどうかは、社員の働きやすさや企業の信頼感に直結します。
特に以下のような層にとって、日当制度の整備は大きな魅力となります。
- グローバル人材としてキャリア形成を目指す社員は
- 海外業務に積極的な若手社員
- 海外出張が多い営業・技術職の社員
待遇の透明性が高い企業は、社員からの信頼を得やすく、結果として優秀な人材の確保・定着につながります。
また、採用活動においても、「海外出張時の手当が明確である」ことは企業の魅力としてアピールできるポイントです。
社会保険料の負担を軽減できる
海外出張で支給する日当を、適切な「出張旅費規程」に基づいて支給される実費弁償的なものにできれば、所得税、住民税、社会保険料(健康保険・厚生年金)の算定対象外になります。
出張手当は「報酬」に含まれず、標準報酬月額の算定に影響しないことを覚えておきましょう。
つまり、会社側も社員側も社会保険料の負担を軽減できる点がメリットです。
- 企業側:社会保険料の負担が減る
- 社員側:手取り額が減らない
ただし、以下のような場合は「給与」とみなされ、課税対象になるため注意が必要です。
- 相場を大きく超える高額日当
- 目的が不明確な場合
- 出張旅費規程が存在しない
- 実費補助ではなく報酬として支給していると判断される場合
あくまでも相場の範囲内で支給することと、「出張旅費規程」に基づいて一律の計算式で支給することがポイントです。
適切な日当設定と規程整備が、税務リスクを避ける鍵となります。
4.海外出張日当のデメリットとリスク
海外出張における日当制度には多くのメリットがある一方で、制度設計や運用方法を誤ると、コスト増や税務リスク、社員間の不公平感など、企業にとって無視できないデメリットが生じる可能性もあります。
ここでは、制度導入前に押さえておきたい代表的なリスクを整理します。
会社側の支出が増える
海外出張の日当は、食費・雑費・交通費などを包括的にカバーするため、一定の支出増は避けられません。
特に以下のケースでは、想定以上のコストが発生しやすくなります。
- 物価の高い都市(例:ニューヨーク、ロンドン、シンガポール)への出張が多い
- 長期出張が頻発する部署がある
- 役職や出張目的に応じて日当額を細かく設定している
また、為替変動によって実質的な支給額が変動する点も見逃せません。
円安局面では、同じ日当額でも出張者の負担が増え、追加補助が必要になるケースもあります。
そのため、企業側は以下のような対策を講じることが重要です。
- 都市別・地域別の日当基準を設定し、予算管理をしやすくする
- 年に1回程度、物価指数や為替レートを踏まえて見直す
- 出張回数や日数の事前申請ルールを設け、予算超過を防ぐ
日当制度は社員の働きやすさを高める一方で、企業の財務負担にも直結するため、バランスの取れた設計が求められます。
出張旅費規程の整備が必要
海外出張の日当を適切に運用するには、出張旅費規程の整備が不可欠です。
規程が曖昧なまま運用すると、以下のような問題が発生しやすくなります。
- 社員間の不公平感
- 精算時のトラブル
- 税務調査での指摘
- 管理部門の負担増
特に海外出張は、都市ごとの物価差、治安、交通情報など変動要素が多いため、国内出張以上に規程の精密さが求められます。
制度設計には一定の工数がかかりますが、規程が整備されていないと運用が属人的になり、結果的に管理負担が増えるため、早期の整備が望まれます。
効果的かつ効率的に出張旅費規程を作成できるよう、専門業者に頼ることも1つの選択肢です。
勘定科目の判断が複雑になる
海外出張の日当は通常「旅費交通費」や「出張手当」で処理しますが、支給方法によっては「給与」とみなされる可能性があります。
特に以下のケースでは注意が必要です。
- 日当額が相場を大きく超えている
- 出張旅費規程が存在しない、または曖昧
- 実費補助ではなく、実質的に給与の上乗せとして支給している
給与扱いとなると、所得税・住民税・社会保険料の対象となり、企業・社員双方にとって負担が増加します。
税務リスクを避けるためにも、規程と運用の整合性を保つことが重要です。
5.海外出張の日当を設定・運用する際の注意点
海外出張の日当制度は、適切に設計すれば大きなメリットをもたらしますが、運用を誤ると税務リスクや社員の不満につながる可能性があります。
ここでは、制度設計時に特に注意すべきポイントを詳しく解説します。
日当が高過ぎる場合は課税対象になる
海外出張の日当は、原則として非課税ですが、過剰な支給は「給与」扱いとなり、課税対象になります。特に以下のケースは注意が必要です。
- 出張先の物価水準に比して不自然に高額
- 役職による差が極端で合理性がない
- 出張旅費規程が曖昧で、支給根拠が説明できない
課税対象となると、社員の手取りが減るだけでなく、企業側の社会保険料負担も増加します。
パート・アルバイトも日当の対象にできる
日当は正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員などにも支給できます。
ただし、対象範囲を明確に規程化しておかないと、「なぜ自分は対象外なのか」という不公平感が生じたり、精算時の混乱や労務トラブルが発生したりする可能性があります。
そのため、企業は以下のような基準を設けることが一般的です。
- 出張の目的(営業・研修・同行など)
- 業務内容(顧客対応の有無など)
- 拘束時間(半日・終日など)
- 雇用形態ごとの支給基準
また、派遣社員や業務委託スタッフが同行する場合は、契約内容に応じて個別に取り決める必要があります。
勘定科目の誤りに注意
海外出張の日当は、通常「旅費交通費」や「出張手当」で処理しますが、支給方法によっては「給与」とみなされる可能性があります。
特に以下の点に注意が必要です。
- 「旅費交通費」として処理する場合は、規程に基づく一律支給であること
- 実費精算と日当を混在させる場合は、対象範囲を明確にすること
- 給与扱いとなるケースを理解しておくこと
- 経理部門と人事部門で運用ルールを統一すること
勘定科目の誤りは税務調査で指摘されやすいため、規程と運用の整合性を保つことが重要です。
6.まとめ|海外出張の日当制度を整備し、出張管理の最適化を進めたい企業へ
海外出張の日当制度は、社員の負担軽減、経費精算の効率化、税務面でのメリットなど、多くの効果をもたらします。
一方で、金額設定や規程づくりには専門的な知識が必要であり、社内だけで整備するには手間やリスクが伴います。
海外出張制度の設計や日当規程の策定、運用フローの整備を進めたい企業は、ビジネストラベルマネジメントの専門知見を持つ外部パートナーを活用することで、より安全かつ効率的に制度を構築できます。
特に、
- 海外出張の手配・管理を一元化したい
- 日当や旅費規程を見直したい
- 出張コストを最適化したい
- 出張者の安全管理(リスクマネジメント)を強化したい
といった課題を抱える企業にとって、専門サービスの活用は大きな効果を発揮します。
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