海外赴任の辞令が出た瞬間から、総務・人事部門における担当者の業務は一気に増大します。

赴任者本人の準備だけでなく、企業としての手続き、家族帯同の支援、住まいの管理、現地法人との調整など、関わる領域は多岐にわたります。

本記事では、年間数千世帯の海外赴任を支援する「リロケーション・インターナショナル」の知見に基づき、総務人事が押さえるべき「海外赴任のやること」について、3ヶ月前から渡航直前までのタスクを時系列で整理しました。

企業側のサポートが不十分だと従業員の「持ち家管理」が難しくなる恐れがあるため、金銭的リスクを最小化するための最適解も詳しく解説します。

1.海外赴任3ヶ月前:企業が最優先で着手すべき手続き

海外赴任の準備は、3ヶ月前からすでに“時間との勝負”です。総務人事として最初に着手すべきは、企業側の支援がないと進まない手続き、つまり「他者が介在する手続き」です。

ビザ申請・パスポート・予防接種

準備の最優先事項は、入国に必要なビザの取得です。ビザ申請は、国によって必要書類・審査機関が大きく異なります。

特に米国・中国・インドなどは審査が長期化しやすく、書類に不備があると渡航日に間に合わず、現地法人の受け入れ計画にも影響します。

総務人事としては

  • 必要書類のリスト化
  • 会社側で準備すべき書類の早期発行
  • 赴任者のパスポート期限チェック
  • 予防接種スケジュールの案内

など、赴任者が迷わない環境づくりが重要です。

海外赴任の際、予防接種はA型・B型肝炎や破傷風など複数の接種が推奨されますが、これらは一度の接種では終わりません。

数週間の間隔を空けて複数回打つ必要があるため、スケジュールがタイトになりがちです。

医療機関の予約が取りづらい地域では、早期の案内が赴任者の負担軽減につながります。

語学・文化・生活情報の提供

海外赴任の成功は、ビザや引越しといった事務手続きだけでなく、赴任者が現地の生活環境にどれだけスムーズに適応できるかに大きく左右されます。

そのため総務人事には、語学力の向上支援に加えて、文化理解・生活情報・家族の不安解消といった“ソフト面のサポート”を体系的に提供する役割が求められます。

赴任者は、現地に到着した瞬間から、言語・文化・医療・治安・教育など、日常生活のあらゆる場面で判断を迫られます。

これらの情報を事前に把握しているかどうかで、赴任後のストレス量は大きく変わります。

特に家族帯同の場合、帯同家族の不安が赴任者のパフォーマンスに直結するため、企業側の情報提供は極めて重要です。

こうした背景から、企業としては以下のような支援を体系的に整備することが効果的です。

  • ビジネスシーンで使う実践的な語学研修
  • 現地文化・商習慣の事前インプット
  • 医療・治安・物価などの生活情報の提供
  • 家族帯同者向けのオリエンテーション

特に医療情報は、赴任者が最も不安を抱える領域です。

「日本語が通じる病院」「保険の適用範囲」「緊急時の連絡先」など、ネット検索では得られない情報を提供できると、企業への信頼感は大きく高まります。

2.海外赴任2ヶ月前:生活基盤の整理と家族支援

渡航まであと2ヶ月となると、赴任者の生活環境を「畳む」作業が本格化します。

総務人事は、引越・家族帯同・学校手続きなどのサポートを整える必要があります。

海外引越しの見積もりと荷物仕分け

海外への引越しは、国内引越しとは比較にならないほど複雑です。

荷物は大きく分けて、

  • 航空便(早く届くが容量が少ない)
  • 船便(大量に送れるが到着まで数ヶ月)
  • トランクルーム保管(日本国内に残す)
  • 廃棄・売却

の4つに分類する必要があります。

赴任者がこの仕分けを誤ると、現地到着後に「すぐに必要なものがない」「不要なものが大量に届いて置き場に困る」といった事態を招きます。

総務人事としては、赴任者が迷いやすい以下のポイントを事前に説明しておくとスムーズです。

  • 海外引越し特有の関税ルール
  • 国ごとに異なる禁制品(持ち込み禁止品)
  • 変圧器が必要な家電や、現地調達の方が安い家具
  • 通関書類の不備による遅延リスク

海外引越しに慣れていない赴任者は多く、情報の収集・提供には多大な時間と労力がかかります。

事前に専門企業のサポートを活用することで、総務人事の問い合わせ対応負担を大幅に軽減することも可能です。

配偶者の退職・雇用保険、子どもの学校手続き

家族を伴う赴任の場合、配偶者のキャリアや子供の教育に関する調整は、非常にデリケート且つ赴任者のパフォーマンスに直結する問題です。

総務人事としては、以下の情報提供が重要です。

  • 配偶者の雇用保険の受給期間延長
  • 日本人学校・インターナショナルスクールの選定
  • 教科書の取り寄せ(JOES)
  • 予防接種・医療情報
  • 帯同家族向けの生活オリエンテーション

雇用保険の受給期間延長については、現在のルールでは受給期間の満了日までに申請を行う必要があります。

かつての「離職日の翌日から30日経過後、1ヶ月以内」というルールは旧情報ですので注意してください

子どもの教育に関しても、公益財団法人海外子女教育振興財団(JOES)を通じて教科書を受け取る際は、出国前であっても海外への送料相当額として2,000円が必要になるなど、細かな実務上の決まりがあります。

こうした家族に関わる不安が解消されるほど、赴任後は現地での業務に集中できます。

企業としてのサポート品質が問われる領域です。

3.【重要】自宅の管理:企業が見落としがちなリスクと最適解

海外赴任にあたって、多くの赴任者が悩みがちなテーマに「日本に残す持ち家をどうするか」という問題があります。

総務人事は、ビザ・引越し・家族帯同などの“企業が関与する領域”には自然と相談を受けますが、持ち家の扱いは個人資産に関わるため、赴任者が遠慮して相談しないケースが大半です。

しかし実際には、赴任者の心理的負担は非常に大きく、帰任後の生活基盤にも直結する重要テーマです。

総務人事としては「相談されない領域こそ、リスクが潜んでいる」という前提で、持ち家管理の選択肢とリスクを正しく理解し、赴任者に情報提供できる体制を整えることが重要です。

以下では、総務人事が押さえておくべき持ち家管理のポイントを整理します。

空き家管理・一般賃貸管理のリスク

赴任者が最初に検討しがちな選択肢は、月に1回程度の定期訪問と窓開けを行う「空き家管理」または「一般の賃貸管理会社に任せる」という方法です。

しかし、これらには企業側が把握しておくべきリスクが存在します。

空き家管理の課題

  • 建物の劣化が早まる
  • 防犯面での不安を完全に払拭できない
  • 維持費だけが発生し、収益化できない
  • 近隣トラブルが発生しても海外から対応できない

空き家管理は「最低限の維持」には役立ちますが、赴任者の不安は解消されず、企業側に後から相談が来るケースもあります。

一般賃貸管理の課題

  • 家賃滞納が発生した場合、オーナー(赴任者)が判断する必要
  • 入居者トラブルの連絡がオーナー(赴任者)に直接届く
  • 修繕の可否を海外から判断しなければならない
  • 時差の影響で緊急対応が遅れる
  • 帰任時に入居者が退去せず、帰国後の住まいが確保できないリスク

これらはすべて、赴任者が個人で抱え込む問題であり、企業側が気づいたときにはトラブルが進行していることも珍しくありません。

赴任者の不安を軽減する「留守宅管理サービス」という現実的な選択肢

空き家管理や一般賃貸管理には、赴任者が海外から対応しづらいリスクが多く存在します。

しかし、赴任者は個人資産の話題であるため、総務人事に相談しづらく、悩みを抱えたまま出国してしまうケースが非常に多いのが実情です。

そこで、近年多くの企業が「情報提供」という形で案内しているのが、専門企業による「留守宅管理サービス」です。

留守宅管理サービスには、単なる“空き家の見回り”ではなく、赴任期間中に自宅を賃貸に出し、賃料収入を得ながら専門会社が管理を行うタイプがあります。

日本では、日本発のリロケーション企業として長年の実績を持つ業界大手・リロケーション・ジャパンが提供する「リロの留守宅管理」などが代表的なサービスとして知られています。

この方式は、空き家管理や一般賃貸管理の課題を解消しつつ、赴任者の資産を有効活用できる点が特徴です。

総務人事としても中立的に案内しやすく、企業側の負担軽減にもつながるため、近年注目度が高まっています。

留守宅管理サービスがもたらす企業側のメリット

  • 赴任者と家族の心理的負担が減り、現地でのパフォーマンスが安定

自宅の管理・賃貸・トラブル対応を専門会社に任せられるため、赴任者は日本側の心配をせずに業務に集中できます。また帯同家族の安心感にも直結します。これは企業にとって最も大きなメリットです。

  • 帰任時のトラブルが起きにくく、人事計画が乱れない

帰任時の退去調整や清掃・点検も専門会社が行うため、帰任後の住まいが確保できず、帰任日をずらすといった事態が起きにくいです。

  • 企業として“赴任者支援の質”が向上する

持ち家の扱いは相談されにくい領域ですが、企業が情報提供するだけで「ここまでサポートしてくれる会社」という印象が強まり、企業のブランド価値向上にも寄与します。

4.海外赴任1ヶ月前:役所・金融・通信の最終手続き

渡航まで1ヶ月を切ると、いよいよ日本での居住実態を解消する「役所関連」と、海外での生活を支える「金銭・通信」の手続きが佳境に入ります。

国外転出届とライフラインの解約

1年以上の海外赴任となる社員には、市区町村役場での「国外転出届」を案内します。

国外転出届を提出すると住民税や国民年金の支払い義務が一時的に停止されますが、マイナンバーカードの取り扱いには注意が必要です。

現在は「国外継続利用」の手続きを行うことで、赴任中もマイナンバーカードを有効に保持でき、海外からの確定申告や行政手続きが可能になります。

これらの点を事前に説明しておくことで、社員の不安を軽減できます。

また、電気・ガス・水道などのライフラインは、退去日に合わせて解約日を設定するよう案内します。特にインターネット回線などは撤去工事が必要なケースがあるため、早めの連絡が必要です。

郵便物についても、実家や代理人宅への転送設定を忘れずに行うよう最終確認を促すとスムーズです。

銀行・保険・携帯電話の海外対応設定

金融機関の手続きも、海外赴任前に必ず確認しておきたいポイントです。

日本の銀行口座を解約する必要はありませんが、多くの場合「非居住者」扱いとなるため、該当する届け出が必要になります。

あわせて、海外からのログインや送金が可能なサービスを事前に設定しておくよう案内すると、赴任後のトラブル防止につながります。

通信環境については、日本の電話番号を維持しつつコストを抑える方法を案内します。

例えば「povo2.0」のようなプランを利用すれば、基本料金を0円に抑えながら番号を維持できます。

ただし、180日ごとにトッピングの購入(最安で年間数百円程度)が必要なため、企業側でスケジュール管理の注意点として伝えておくと安心です。

さらに、現地で使用するスマートフォンのSIMフリー化やVPNの設定など、デジタル環境の準備を出国前に済ませるよう案内することで、赴任後の孤独感や不便さを大きく軽減できます。

5.出発1週間前:最終チェックとメンタルサポート

出発まであと1週間という時期は、赴任者が新しい生活への期待と不安を同時に感じるタイミングです。

総務人事としては、最終チェックリストの提供と、相談窓口の明確化を行うのが重要です。

手荷物・航空便・船便の最終確認

当日空港に持っていく手荷物には、パスポートやビザ、航空券だけではありません。

現地到着後の当座の生活費、常備薬、そして重要書類のコピーなどがあります。

そしてデジタル化が進んでいるとはいえ、現地の入国審査や住居契約で、紙の書類が必要になる場面も少なくありません。

それらをまとめたチェックリストを企業側から提供するだけで、赴任者の不安は大きく軽減されます。

先輩駐在員が教える「直前のアドバイス」

実際に海外赴任を経験した方々が異口同音に語るのは、「準備に終わりはないが、孤独に抱え込まないことが最大の防御である」ということです。

どれほど入念に準備をしても、言葉も文化も異なる異国の地では、日本では想定し得ない壁に直面します。

その際、自分一人で解決しようとせず、プロのサポートラインを確保していることが、メンタルヘルスを保つ鍵となります。

現地での生活立ち上げやトラブル対応を支援する専門企業の存在は、赴任者と家族の安心感を大きく支えます。

企業としても、こうした外部サポートを活用することで、総務人事の負担を大幅に軽減できます。

まとめ

海外赴任の準備は、総務人事にとっても赴任者にとっても負担が大きいものです。

しかし正しい順序で進め、必要な支援を適切に提供すれば、トラブルを最小限に抑え、赴任者が現地で最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を整えられます。

海外赴任支援の分野で豊富な実績を持つリロケーション・インターナショナルでは、赴任前の手続き支援から現地生活のサポート、さらにグループ会社による留守宅管理サービスまで、ワンストップで支援しています。

海外赴任の準備に不安がある企業様や、煩雑な業務の効率化を図りたい企業様は、まずはリロケーション・インターナショナルにご相談ください。

▼リロケーション・インターナショナル「海外赴任サポート」の詳細はこちら