従業員のリフレッシュや家族との時間を支える福利厚生として、保養所は多くの企業で採用されてきました。

しかしバブル崩壊以降は維持コストや利用率の低迷が課題となり、直営保養所を手放す企業が増加しています。

一方で、コロナ禍を経て従業員のウェルビーイングへの関心は高まり、旅行・レジャー需要は力強く回復。

いま企業に求められているのは、「保養所を持つかどうか」ではなく、「どのように保養の機会を提供するか」という視点です。

本記事では、保養所制度の基礎知識から提供形態の比較、導入・運用のポイント、最新トレンドまでを整理し、現代の企業に適した制度設計のヒントを解説します。

1.保養所制度の基礎知識

従業員の働き方や価値観が多様化するなかで、福利厚生の在り方も大きく変わりつつあります。

特に保養所制度は、かつての「持つことがステータス」という時代から、「いかに効果的に活用するか」が問われる制度へと姿を変えてきました。

一方で、保養所という言葉はよく耳にするものの、その定義や目的、制度としての特徴を改めて整理する機会は意外と少ないものです。

そこでまずは、保養所制度の基本的な仕組みや役割について確認し、現代の企業にとってどのような意味を持つのかを見ていきます。

保養所とは何か

保養所とは、企業や健康保険組合が従業員の保養・レジャー・研修などを目的として設ける宿泊施設のことです。

温泉地やリゾートエリアに立地するケースが多く、従業員とその家族が低額で利用できる点に特徴があります。

目的は大きく分けて2つあります。

  • 従業員の心身のリフレッシュによるモチベーション維持
  • 部署を超えた従業員同士のコミュニケーション促進

保養所は法定外福利厚生に分類され、企業が任意で導入する制度です。

住宅手当や食事補助と同じカテゴリーに属しますが、「非日常の場で心身を休める」という独自の役割を持っています。

保養所制度の歴史と変遷

保養所が企業福利厚生として広がったのは、高度経済成長期からバブル期にかけてです。

1980年代後半には「ハコモノ」福利厚生が競うように整備され、海沿いや山間部に立派な自社保養所を持つ企業が数多く存在しました。

しかし、1990年代のバブル崩壊を機に状況は一変します。

経営の効率化が求められるなか、保養所は「維持コストがかさむ割に利用率が低い」施設として見直しの対象になりました。

健康保険組合連合会の調査によると、健康保険組合が所有する保養所は

2000年度末: 1,581施設 → 2018年度末: 284施設

と大幅に減少しました(出典:健康保険組合連合会「福祉事業に関する実態調査」)。

企業が単独で所有していた保養所も同様に売却や閉鎖が進み、「持つ福利厚生」から「外部サービスを活用する福利厚生」へとシフトしていきます。

現在の保養所を取り巻く環境

保養所に対する企業の姿勢は、以前と比べて複雑になっています。

エン・ジャパンの調査(2013年)では、保養所・運動施設が「なくてもよい福利厚生」の2位にランクインしました。

維持コストに対して利用率が伸び悩むケースが多かったためです。

しかし、コロナ禍以降は状況が変わりつつあります。

  • 旅行・レジャー需要の急回復
  • リモートワークによるメンタルヘルス課題の顕在化
  • ウェルビーイング投資の重要性の高まり

これらの背景から、保養所制度を見直す企業が再び増えています。

つまり、「保養所の所有が否定された」のではなく、「提供方法の最適化」が求められる時代に入ったと言えます。

2.保養所制度の提供形態と特徴

保養所制度には複数の提供方法があり、企業規模や予算、従業員ニーズによって適した形は異なります。

ここでは代表的な4つの提供形態について、それぞれの仕組みとメリット・デメリットを整理します。

提供形態概要メリットデメリット
自社所有型(直営)企業が施設を保有・運営運営の自由度が高い
/帰属意識の醸成
維持コスト大/利用率低迷リスク
法人会員制リゾート型リゾートクラブに法人加入全国の施設を利用可能/管理不要/節税効果入会金・年会費/繁忙期の予約競争
福利厚生アウトソーシング型福利厚生代行サービスを活用選択肢が豊富/低コスト/
利用率が高い
品質のばらつき/利用促進が必要
宿泊費補助型従業員が選んだ宿泊先を補助自由度が最も高い
/維持費ゼロ
予算管理の手間/公平性の確保が必要

以下、それぞれの特徴を詳しく見ていきます。

形態1. 自社所有型(直営保養所)

自社所有型(直営保養所)は、自由度が高く、研修やチームビルディングにも活用できます。

「自社の施設」の利用は帰属意識の醸成にもつながります。

一方で、土地・建物の取得費用、修繕費、人件費、光熱費などの維持コストが重く、利用率が20%前後にとどまるケースも珍しくありません。

施設の老朽化が進むと利用者が減り、コストだけが残る悪循環に陥るリスクもあります。

このため、直営保養所を手放し外部サービスへ切り替える企業が増えています。

形態2. 法人会員制リゾート型(契約保養所)

法人会員制リゾート型は、リゾートクラブやホテルチェーンが提供する会員制サービスに法人契約で加入し、全国各地の施設を利用できる方式です。

代表的な仕組みは以下の通りです。

  • ポイント制タイムシェア

年間で付与されるポイントの範囲内で、好きな施設・日程を選んで利用できる方式です。特定の施設に縛られず、全国のリゾートを柔軟に使い分けられるため、従業員の旅行スタイルや家族構成に合わせた利用がしやすい点が特徴です。

  • 固定施設型(特定ホテルの利用権)

特定のリゾートホテルや施設の利用権を法人として購入し、その施設を優先的に利用できる方式です。利用できる施設は限定されますが、安定した予約確保や施設の品質を把握しやすいというメリットがあります。

  • チェーン提携型(ホテルチェーンの法人会員)

ホテルチェーンが提供する法人会員制度に加入し、全国の提携ホテルを割引料金で利用できる方式です。初期費用を抑えつつ、幅広い地域の宿泊先を確保できるため、出張とレジャーの両方で活用しやすい点が魅力です。

直営保養所と比べて初期投資が小さく、維持管理は運営会社が担うため、企業側の負担は大幅に軽減されます。全国の施設を選べるため、従業員の旅行スタイルに合わせた利用が可能です。

こうした手軽さと柔軟性から、直営保養所に代わる選択肢として導入企業は年々増えています。

また、法人会員制リゾートの利用料は福利厚生費として計上できるため、企業にとって節税効果が期待できます。

全従業員に平等な利用機会を設けるなど、福利厚生費として認められるための要件を満たしていれば、損金算入が可能です。

直営保養所の維持に多額の固定費をかけるケースと比較すると、会員制リゾートへ切り替えることで費用対効果が大きく改善する企業も少なくありません。

一方で、注意すべき点もあります。入会金や年会費といった固定費が発生するほか、繁忙期には人気施設の予約が取りづらくなる場合があります。

また、従業員にも一定の自己負担を求めるのが一般的であり、その負担感によって利用率に差が出る可能性も考慮する必要があります。

形態3. 福利厚生アウトソーシング型

福利厚生アウトソーシング型は、福利厚生の専門会社と契約し、宿泊施設の優待を含む幅広いサービスを従業員に提供する方式です。

保養所に特化した制度ではなく、旅行・レジャー・育児支援・健康増進・資格取得支援など、多様なメニューをパッケージとして利用できる点が特徴です。

従業員は専用のWebサイトやアプリから、全国の提携施設を割引価格で予約したり、日常的に使えるサービスを選んだりできます。

この方式のメリットは、以下のように多岐にわたります。

  • 選択肢の豊富さ

宿泊施設だけでなく、映画館、フィットネス、育児・介護支援、自己啓発など、従業員のライフスタイルに合わせて利用できるサービスが揃っています。

  • コスト効率の良さ

1社あたりの負担が小さく、中小企業でも大企業並みの福利厚生を提供しやすい仕組みです。直営保養所のような維持管理コストも発生しません。

  • 利用率の高さ

旅行に限らず日常的に使えるサービスが多いため、従業員の利用機会が増え、福利厚生の「使われない問題」を解消しやすい点も評価されています。

一方で、デメリットも存在します。提携先のサービス品質にばらつきがある場合があり、企業側で従業員への周知や利用促進を行わないと利用率が伸びにくいことがあります。

また、宿泊施設のグレードや立地がサービス提供会社によって異なるため、利用者の満足度に差が出る可能性も考慮が必要です。

保養所制度の見直しにあたっては、法人会員制リゾート型とアウトソーシング型を組み合わせて導入する企業も増えています。

形態4. 宿泊費補助型

宿泊費補助型は、従業員が自分で選んだ宿泊先に対して、企業が費用の一部を補助する方式です。

特定の施設に縛られず、旅行先・宿泊スタイル・同行者などを自由に選べるため、従業員の満足度が高い制度として知られています。

企業側も施設を保有・管理する必要がないため、維持コストが発生しない点が大きなメリットです。

一方で、運用にあたっては補助額の上限設定や利用実績の管理が必要となり、一定の事務負担が生じます。

また、福利厚生費として損金算入するためには、全従業員に公平な利用機会を提供するなど税務上の要件を満たす必要があります。

制度としてはシンプルですが、ルール設計には一定の配慮が求められる方式です。

3.保養所制度を導入・運用する際のポイント

保養所制度は導入しただけでは十分に機能しません。

従業員が実際に利用し、企業としての投資効果を高めるために、制度設計や運用の工夫が欠かせません。

ここでは、形態選定から運用ルール、税務対応まで、押さえておきたいポイントを整理します。

自社の目的とニーズに合った形態を選ぶ

制度選定の第一歩は、「何のために導入するのか」を明確にすることです。

リフレッシュ機会の提供を重視する企業と、研修・チームビルディングを重視する企業では、適した制度が異なります。

特に検討すべきポイントは次の3つです。

  • 目的:リフレッシュ重視か、研修・交流重視か
  • 予算 :初期費用とランニングコストを数年単位で比較
  • 社内リソース :直営型は運営負担が大きいため、外部サービスの活用も選択肢にこれらを整理することで、自社にとって最適な制度が見えやすくなります。

利用しやすいルールと魅力的な制度設計

制度を導入しても、従業員が使いづらければ利用率は伸びません。

そのため、まずは「迷わず使える仕組み」を整えることが重要です。

予約方法や利用ルールが複雑だと、せっかく制度を用意しても利用が進まないケースは少なくありません。

利用率を高めるためには、次のような工夫が効果的です。

  • 予約手続きの簡素化(オンラインで完結する仕組み)
  • 利用ルールの明確化(申請期限・キャンセル規定・同行者の範囲など)
  • 季節限定のキャンペーンや利用者体験談の共有による利用意欲の喚起

こうした工夫により、制度の存在が従業員にとって「使いやすく、魅力的なもの」として認識され、自然と利用が広がっていきます。

税務上の注意点と公平性の確保

保養所制度にかかる費用を福利厚生費として損金算入するためには、税務上の要件を満たす必要があります。

特に、福利厚生制度は「全従業員を対象とした共通の利益」を目的としていることが前提となるため、制度設計の段階から公平性を意識することが欠かせません。

税務上、特に注意すべきポイントは次の通りです。

  • 全従業員に平等な利用機会があること

特定の役員や一部の社員だけが優先的に利用できる制度は、福利厚生費として認められず、給与課税の対象となる可能性があります。利用枠の偏りや、特定層だけが使いやすい制度設計になっていないかを確認することが重要です。

  • 自己負担額が社会通念上妥当であること

従業員の自己負担がゼロの場合、経済的利益の供与とみなされるリスクがあります。一般的には、1泊あたり数千円程度の自己負担を設定する企業が多く、税務上も妥当と判断されやすい水準です。

  • 利用実績の記録を残すこと

誰が、いつ、どの施設を利用したかを記録しておくことは、税務調査への備えとして不可欠です。制度の公平性を説明する根拠にもなるため、運用開始時から記録方法を整えておくことが望まれます。

これらのポイントを押さえておくことで、制度の透明性が高まり、税務リスクを避けながら安心して運用できます。

福利厚生制度は従業員の満足度向上に直結する施策である一方、税務上の扱いを誤ると企業側の負担が増える可能性もあるため、制度設計の段階から慎重に対応することが重要です。

継続的な効果測定と改善

保養所制度は導入して終わりではなく、定期的に効果を測定し改善していくことで、より価値のある制度になります。

特に確認すべき指標は以下の通りです。

  • 利用率(全従業員に対する利用者の割合)
  • 利用者満足度(アンケートなど)
  • 1人あたりのコスト(費用対効果)

利用率が低い場合は、周知不足や予約のしづらさ、制度の魅力不足など原因を切り分け、必要に応じて制度内容や告知方法を見直すことで改善が期待できます。

たとえば、保養所をあまり使わない層に向けてアンケートを実施し「夏休み前に情報を知りたかった」という声が多ければ、季節に合わせた社内告知の強化で改善が見込めます。

こうした地道な改善の積み重ねが、制度を「コスト」から「投資」に転換する鍵になります。

4.最新の保養所ニーズと新たな活用法

コロナ禍を経て、保養所制度の役割は大きく変化しています。

従業員の健康や新しい働き方を支える仕組みとして、保養所の価値が再評価されつつあります。

ここでは、直近のトレンドと今後の保養所制度の方向性を整理します。

コロナ後に高まるリフレッシュ需要

コロナ禍では外出自粛が続き、旅行需要は大きく落ち込みました。しかし、2022年以降は反動もあり、国内旅行・レジャー市場は急速に回復しています。

同時に、リモートワークの長期化によるストレスや孤立感が課題として浮き彫りになり、企業には従業員のウェルビーイングを支える取り組みがより強く求められるようになりました。

こうした背景から、「非日常の環境で心身をリフレッシュできる機会」の価値が再評価され、保養所制度を見直す企業が増えています。

従業員の満足度向上だけでなく、メンタルヘルス対策としても効果が期待できる点が、制度導入の後押しとなっています。

ワーケーション拠点としての保養所

近年は保養所を「休む場所」だけでなく、「働く場所」として活用する動きも広がっています。

Wi-Fi環境やワークスペースが整ったリゾート施設であれば、平日はテレワーク、休日は観光を楽しむといった柔軟な働き方が可能です。

創造性の向上や集中力の確保といった効果を期待し、ワーケーション制度を導入する企業も増えています。

特に、全国の施設を選べるポイント制の会員制リゾートは、プロジェクト内容や気分に合わせて滞在先を選べるため、ワーケーションとの相性が良い仕組みです。

(※リロバケーションズの「法人向け会員制リゾートクラブ」のように、キッチン付きのコンドミニアムタイプを全国から選べるサービスは、長期滞在型のワーケーションにも適しています)

5.福利厚生全体における保養所の位置付け

保養所制度は単独で運用するよりも、他の福利厚生施策と組み合わせることで、より大きな効果を発揮します。

ここでは、保養所制度を福利厚生全体の中でどのように位置付けるべきかを整理します。

多様なニーズに応える福利厚生ポートフォリオの一部として

従業員の価値観が多様化するなか、福利厚生も「一律の制度」では十分に機能しなくなっています。

そのため、保養所制度をカフェテリアプランの選択肢として組み込むなど、従業員が自分のライフスタイルに合わせて選べる仕組みを整える企業が増えています。

育児・介護支援、健康増進施策、リモートワーク手当などと並列に位置付けることで、多様な従業員のニーズに応える総合的な福利厚生ポートフォリオが構築できます。

多様なニーズに応える福利厚生ポートフォリオの一部として保養所制度は、従業員の満足度向上だけでなく、採用力や定着率の向上にも寄与します。

特に若年層は「プライベートの充実」を重視する傾向が強く、旅レジャーを支援する制度は企業の魅力として伝わりやすい施策です。

また、家族で利用できる制度は、従業員の家庭生活を支える側面もあり、長期的なエンゲージメント向上にもつながります。

6.まとめ|保養所制度は「持つ」から「活用する」時代へ

保養所制度は「持つ」か「持たない」かの二択ではありません。

直営型、会員制リゾート型アウトソーシング型宿泊費補助型など、企業の目的や予算に応じて選べる選択肢は幅広く存在します。

なかでも近年注目されているのが、ポイント制タイムシェア型の会員制リゾートです。

全国の施設を柔軟に利用でき、維持管理の負担もなく、直営保養所の代替として多くの企業が採用しています。

保養所制度の新規導入や見直しを検討されている企業様は、リロバケーションズが提供する法人向け会員制リゾートクラブの活用も、選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

リロバケーションズは、東証プライム上場・リログループの一員として、長年にわたり企業の福利厚生を支援してきた実績を持つ企業です。

全国のリゾート施設を安定した品質で利用できる点や、ポイント制による柔軟な運用性が評価され、多くの企業が直営保養所の代替として導入しています。

従業員満足度の向上や採用力強化を目指す企業にとって、安心して導入できる制度設計が可能です。

まずはサービス内容を確認し、自社の福利厚生戦略に合うか検討してみてください。

▼「法人向け会員制リゾートクラブ」のサービス詳細はこちら